小説 | ナノ

「くる…しい…」
「流石に無理だな、コレは。」
「気持ち悪い…アイスと生クリームはもう食べたくない。」
「おいおい、もうちょい頑張ろぜ。」
「これ以上入れたら吐く。」
「止めろよ。吐いたら逃げるから俺。」
「団蔵ひどくない?」
「お前がもともと巨大パフェ食べたいって言ったんだろ。俺は別に乗り気じゃなかった。」
「う…ごめん。」
「なんてな。別に吐いても逃げないから。当たり前だろ。」
「ほんと?ありがとう団蔵!」
「だけど絶対吐くなよ。」
「うん。でももう食べるのは無理。」
「しょうがねえ。応援呼ぼう。」

そう言うなり団蔵は誰かに電話をかけ始めた。

「あー、今暇?あ、そう。じゃーさ、パフェ食いにこないか。余ってんだよ。うん。そうその店。おうサンキュ。じゃーな。」

携帯をパタンと閉めて団蔵は「応援来るって。」と言った。

「え?誰?」
「しんべヱ。」
「あ、あの乱太郎くんと仲良いふっくらした子だ。」
「そうそう。あいつが来たら一瞬で食べてくれるよ。」
「一瞬て。これ結構余ってるよ?」

しかし食べ残した巨大バフェを処理するためにわざわざ来てくれるとは、ありがたい。
感謝感謝。



しんべヱくんは10分くらいでやって来た。
そして、5分ほどでパフェのグラス(もはやバケツ)を空にしてくれた。

「あー、美味しかった。ごちそうさま。」

にこやかに笑う彼はとっても満足そうだ。

「ありがとうしんべヱくん。助かったよ。」
「花子ちゃん。こっちこそ、ありがとうね。美味しいもの食べさせてくれて。」

なんて良い人なんだろうしんべヱくん。食べ残しで感謝してくれるなんて。
それに初対面なのに全然それを感じさせない空気があるし。心がじーんとする。

「私甘いもの好きなんだけどね。結局量は食べられないんだよなあ。いっつもそう。」
「じゃあ余ったら僕が食べるよ。いつでも呼んで!」
「ああそれ助かる!今度じゃあ和菓子食べに行こうよしんべヱくん。」
「うん!花子ちゃんの好きな落雁とかね!」
「そう!落雁!美味しいよね…て、私落雁好きだって言ったっけ?」

団蔵には言った気もするけど。団蔵経由かな。
しんべヱくんは「あ、」とだけ言って何も言わなくなってしまった。
しんべヱくん、団蔵から聞いたんでしょ?そう言ってくれればいいんだよ。
その一言でいいのに。

「あー、俺しんべヱに言ったかも。」

なんとなく気まずい沈黙を破って、黙っていた団蔵が入ってきた。

「なんだ、やっぱ団蔵かあ。」
「落雁が好きなんてババくせーよなあって。」
「あれ、団蔵そんなに私に叩かれたいの?」
「ジョークジョーク。」

テーブルは再び和やかな雰囲気になる。
それにまた安心して、私は残った水を飲み干した。




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