小説 | ナノ

「マジだりーよなあ。集会ごとって。」
「まーね。でもただ居るだけでいいところは好きだよ。なんにも考えなくていい。」

今日は学長のありがたーいお話をお聞きする、全体集会だった。退屈な時間が終わって周りはやかましい。私と団蔵は雑談を交わしながら人がいなくなるのを待っている。

「俺は嫌だ。なんか時間を物凄く無駄にしている気がするんだよ。」
「団蔵みたいに時間を限りなく無駄に生きている奴からそんな言葉が出るなんて…」
「失礼だな花子。俺はいつでも充実した毎日を過ごすのに必死だよ。」
「そうだね。授業中寝たりね。」
「そうだ。アレは大事な俺の睡眠時間だからな。」

団蔵の言葉に呆れてため息をつく――と、

「あ、」
「へ?」
「ううん。」
「なんだよ。」
「うーん、なんかね。いっつもこう、全体の集まりの時に視線を感じるんだよね。」
「花子、自意識過剰って知ってるか?」
「ふざけないでバカとう。本当なんだって、だいたいあのへんから、」

私が指を指して振り向いた先に、明らかに挙動不審になって目を逸らした男の子がいた。あまりにもあからさまなその行動に私は一瞬固まる。

「あ、金吾だ。」
「金吾?誰それ。」
「俺の友達。」
「本当に顔広いね。」
「おーい、金吾!」
「えっわざわざ呼ぶの?いいよ。」
「うわっあいつ俺のとこ無視してるし。花子行くぞ。」
「だから人の話を!」

そんなこと言ってみてももう団蔵は走りだしているから無駄だ。私は諦めてついていく。
金吾くんという子は近づいてきた私たちに気がついてギョっとした顔をした。

「よっ金吾!」
「だ、団蔵。どうしたんだよ。」
「いや、だってお前こっち見てたじゃんか。」
「いや、あれは別に…」

かわいそうに。金吾くんはひどく慌てていた。
そしてこちらをチラチラ気にしている。なんだい金吾くん。

「コイツ、花子。」
「…知ってる。」
「え、私知ってるの?」
「あ、ああ、まあ。」
「花子の声デカいからなあ。って痛い痛い!お前足踏むな!」
「フン。」

金吾くんはそんな会話をする私と団蔵を見てちょっと笑った。

「花子さん、僕は皆本金吾です。よろしく。」
「あ、よろしく、えーっと金吾くん。花岡花子です。団蔵の部活の友達?」
「…いや。昔からの友達だな。」
「そっか。仲良くしてね。」

金吾くんはああ、と笑った。
またひとり、友達が増えた。団蔵すごい。昔からの友達が多いなあ。


「金吾はな、剣道部なんだ。」
「へえ、そうなんだ。なんか、それっぽいかも。」
「そうか?…そう思うか?」

いきなり聞かれて、私は困る。うーん。ただぽいってだけだから、聞かれると困るんだよなあ。
そんな感じで曖昧に言うと、そーだよなあと団蔵は笑って言った。すこしだけ、寂しそうに。
私はなんとなくそれ以上追及されないことにほっとしながら、人ごみの中を進み始めた。




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