小説 | ナノ

むずかしいことは嫌いだと彼女は言う。



確かに花子の成績を見れば納得がいく…て、何?そういうことじゃなくて?
成績の話なんかするなって…なんだよ。
僕はてっきり花子ができない自分へのやるせなさを吐露したいのかと思ったのに。

あー悪かった悪かった。わかったから、その怪しげな団子はしまってくれ。

なんだよ、じゃあ花子は何が言いたいんだよ。…は?大人になりたくない?
バカかお前。
だーもう、さっきから違う違うって、お前いっつもそうだけど、言葉が足りねぇんだよ!
もっと俺にわかる言葉で話せよ。

…いや、怒ってねぇから。言い方がぶっきらぼうなのなんて、よくわかってんだろ。
これでも、お前に言われたから気つけてるつもりなんだよ。悪い。
ほら、さっさと言っちまえ。聞いてるから、な?



*



…縁談のはなしがあるの、わたし。結構、いいとこのひと。
別にね、縁談がいやとか、そんな立場じゃないのわかってるし。
追試免れたことなんて片手に数えるくらいしかないバカだし。
こんなのをもらってくれるっていうんだったら、別にいいかなってね。
思っては…うん、いるんだけど。納得、はしてないんだ。

だって、お父様は私がそこに行くことで何がいいのか、実際わかっていないんだもの。
苦し紛れなんだよ。

わからないことはわからないと言えばいいのに
何かと回りくどい言い方をして、もっともらしい理由をつけようと必死になってる。
わたし、別にわからないのはぜんぜんいいと思う。だってわからないんだもの。
でも、いかにもわかる風をして私を諭すのが、
さも私のためみたいに力説して、それを利用して自分で納得しようとしてるのが
許せない。

大人って、どうして話を難しく、わかりづらくするのがすきなんだろう。
どうして本質を隠して、子供をだますんだろう。

わたしみたいな子には特にさ、わかりやすく言ってくれないと困るのにさ。



*



「花子は、損なバカだよなぁ。」


「そうなんだよ。作兵衛、わかってくれる?」


「ああ、わかるよ。
…なあ、もしお前が望むなら、ぶち壊してやるけど、どうする?」


「うーん。…かんがえとく。」


「おう、返事待っとく。」



そして彼は、俺も単純なのが好きなんだ、と言った。

そこは明快か

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