小説 | ナノ

「孫兵はジュンコとか、虫たちの次くらいに私のことを思ってくれてる?」

「…僕は、花子のこと好きだけど…ジュンコ達とは比べられないよ。」

「…はは、そうだよね。生き物たちとは並べないか、」


泣いた


「ねえ、孫兵、いっかいだけ、一回だけでいいから、私にがんばれって言ってくれないかな?」

「ん?…がんばれ?」

「んん…できたら、もっと…しっかり…」

「え?」

「、あ、ううん。さっきので大丈夫!ありがとう!がんばるね。」


泣いた



ほんのシミみたいなウソとか言葉が今になってじわりじわりと浸透してくる。
掻き毟りたい衝動に駆られて胸のあたりを掴むが、勿論とれるわけもない。


今更、悔やんでも
今更、人づてに、
僕が君の一番だったなんて聞いても

僕は君を探せずに泣くことしかできない。






薄暗さを運んできた涼しい風が僕の髪の毛を揺らす。




日が落ちる。






ああ、


君は

君は


ここにいたね。







こんな景色のようにひっそりと、僕のそばに居たね。




辛くて思い出せなかった花子の笑顔が浮かぶ。
花子の笑顔が夕日色に染まりそして、藍色に染まる。

さあ、目に焼き付けろ。逸らすな。


僕は、ずっと、君のそばに居るよ。
僕も、君が一番だったよ。
多分君の想いと同じ、一番だったよ。





泣きはらした目がようやく乾いた。
シミは僕の体にしっかりと染み込んで、ほとんど乾いた。



そう、思うことにした。





明日から、笑おう。
君に、笑おう。

僕がここにいることを 生きていることを、伝えるために

君のために喜び、笑おう。



もし僕の想いが君に届いたのなら、

そうしたら、その時は

君の声を聞かせてくれないか。


目が明/く藍/色   song by サカナクション
彼女が望むことを、僕が望むことを

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