小説 | ナノ

「起きたかバカ」

「おはよー左近」

「バカ」

「うんまぁ否定はしないけど」

「ほんとバカだお前は」

「そんなにバカバカ言われるとさすがの私も傷ついちゃうっ」

「気持ち悪い」

「…あ、それはそれで傷つく。せめてキモいが良かった」

「気色悪い」

「うわ…ひどい。教えてあげようか、私年上なんだよ左近ちゃん。」

「今更何言ってんの」

「…ですよね〜」

「ほんっと、年上ならそれなりの振る舞いしたら?」

「左近もね。年下の振る舞いをしようよ。二人っきりになると人が変わったようだね。」

「…ふん。すみませんね、せんぱい。」

「うわ棒読み。すっごい嫌そう」

「…て、違う。」

僕が今日お前に言いたいのは、と言って左近が眉を下げて口を結んだ。

やめてよ、そんなに悲しそうな顔して。

おちゃらけた調子ではぐらかそうにも、左近から目を逸らせない。
胸から苦しさが湧きあがってくる。
やめて、せっかく我慢したのに。

口からの言葉を我慢するかわりに、目からしずくが垂れた。

「バカ」

頭に優しい重みを感じた。

「僕の前でどうして我慢するんだよ」


だって甘えてしまうでしょう
あなたに言葉を押しつけて自己満足に浸るなんて
私が、嫌。
ああこれも自己満足か

ぐるぐるぐるぐる頭は回る


「僕はお前の話が聞きたいよ」

「うそだ」

「は?なんでお前が決めてんの。僕のことだろ。」

「うそだよ」

「僕が言ってんだから素直に聞けよ」

「…」

「強情だよな、お前は昔から」

でも。やっとおまえが昔みたいに僕に我儘言ってくれた。


そう左近が笑った。





だめだ、もう我慢できないよ
我慢しなくて、いいんだね

口から一気に嗚咽が漏れた。



そして、視界は青色に染まる。

馬鹿野郎はわたしです

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