小説 | ナノ

空は青くて風はあたたかくて太陽は明るくて…もうまさにすいみん不足にはたまらない絶好のすいみん日和。眠たい。ずっと寝ていたい。なにもしたくない。ただ居るだけでいたい。考えたくない。

「あー花子ちゃん探したよ!早く来てくれないと鬱憤が溜まって僕の精神が病んじゃうじゃんか!昼寝なんてしてる暇ないでしょ!ほら!」
「タカ丸さん…おねがいです…寝させてください…」

もう少しで眠りの世界に落ちるという最悪のタイミングでタカ丸さんは私を見つけ、無遠慮に頬をつねりだした。必死のお願いもタカ丸さんには何も通じないようだ。知ってた。

「タカ丸さん私、焼き芋焼いてあげましたよね?夜のうちから落ち葉集めて、火起こして加減見て、お望み通り焼き立て提供しましたよね?だから今日くらいは、寝させてください。眠いんです。」
「だーめーーだって僕病んじゃうから。ほらほら。そんな寝たらますますころころ可愛くなるよ!」
「いたいいたいいたい!踏まないでください!だって睡眠は人間の基本欲求ですよ!?それを無理して抑えつけるのはものすごいストレスなんですよ!?私の精神だって病んじゃいますよ!」

あまりの眠気にイライラしていた私は、タカ丸さんに本音をそのまま口走っていた。

「あっそ。じゃあいいよ。」

三倍に言い返されるのではと焦ったが、まるで興味を無くしたようにタカ丸さんはそう言ってどこかへ行ってしまう。珍しい、食い下がってくれた。よ、良かった。安心した途端に私はすぐに眠りの世界に落ちていく。


目が覚めたとき、もう日は落ちてきていた。慌てて草から体を起こし部屋へと急ぐ。あんなに暖かったのに、外の空気はずいぶん冷たくなっていた。

よく寝たな、と思うと同時にさっきの出来事を思い出す。タカ丸さんは怒っているだろうか。眠かったとはいえ怒鳴るのはまずかったんじゃないか。肝を冷やしながら明かりの方へと行こうとした、
が。
隣で空気を切った音、と同時に何かが通り抜けていった。それはわたしの目の前で壁に刺さり、動きを止める。よく見ればそれは見覚えのある、タカ丸さんのハサミ。で。と。いうことは。

「おはよう花子ちゃん。」

▼くらやみを 影にせおった タカ丸さん が あらわれた!!

「ア!タカ丸さん…!おおおおはようござ「やっと起きた?こんな夕方になるまで寝てやっと起きた?」
「ば、ばっちりです…」

震える親指を立てつつ目をそらした。恐ろしくて顔を見れない。逃げるのコマンドを選びたいのに、選択肢が見つからない。

「まさか花子ちゃんが反抗してくると思わなくて、僕はその意外性にあっけにとられていたところだよ〜流石花子ちゃんだよね〜」
「う、ふふ、」
「いやー明日も焼きいも食べたいね、花子ちゃん!」
「ア…!はい!焼かせていただきます!」




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