※悲恋&嫌われ
「っそ」
私の恋人だった、加藤くん。私が騙していた、加藤くん。
加藤くんが今目の前で悲しそうに地面を叩いています。
じめっとした暑さを感じながら、わたしはそれを、冷めた目で見ています。加藤くんが悔しそうにそれはそれは悔しそうに私を見ました。
「最っ底だ、おまえ」
その憎しみに満ちた黒目、ぞくりとする。
加藤くん、今さら何を言ってるの。私はこわいこわいくのいちのたまごで、あなたもそれは十二分にわかっていたことでしょうに。
女の子の好きほど、いい加減なものはないのよ。
「どうする?仕返しする?」
「やめろ、もう、俺に喋りかけるな、」
ああこれで完全に、ごっこ遊びはおしまいね、加藤くん。
沢山悩んだあと、指の間からすうっとこぼれおちすり抜けていくように、感情が色褪せていくのを待つことに決めた。
女の子の好きほど、複雑なものはない。私は悲しいのか寂しいのかよくわからなくて、ただやるせなかった。
できるだけ早急に感情が全部なくなればいい。こういう下らないことも平然と流せるように早く立派なくのいちになって、そしたら全部きっと思い通りになるだろうから。
だってそうするほかないのだ。はじけた想いも寂しさもやさしさも、もとにはもう戻らないから。
こぼれおちる、夏
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