小説 | ナノ

冷静、クールだと思われているらしいが実際はそんなカッコいいもんじゃない。ただ言い訳することが面倒臭いだけだ。だってそうだろう。争ったところで得るものなんて何もないし折れた方がずっと楽だから。

そう本音をいきなり言うと、誰もが驚く。そんなに俺は周りから見ればイケメンキャラなのかと思うと自分でちょっと引いてしまう。

兵助は超絶変わり者だからねー

花子は俺の愚痴に対して、決まってそう言う。彼女がそう言う度に俺は毎回毎回物申したくなる。花子こそ変わった奴なくせによく言う。
知ってるか、今お前が使っているそのコーヒーフレッシュ。いつも勿体ながってペロリと舐めてるけどお前の大嫌いな油分たっぷりだ。教えてやれば人前で舐める行為はやめてくれるか。それからな、年頃の女が音を立てながら氷と混ざった最後のコーヒーまで飲むもんじゃない。
そんなこと言ってみてもケロリと笑って個性だとかチャームポイントだとか便利な言い回しで流すんだろうな。そんなお前だから、憎めない。

「今、失礼なこと考えてたな。」

からかい口調で茶化す花子は、何も考えていないようでなかなか鋭い。

「どうしてそう思う?」
「その返しがまず怪しい。それにね、兵助が思い出し笑いしている時は大抵、私に関する失礼なことを考えているときだ。」

ご名答。
心の中で呟いて笑ってみせる。花子は言葉とは裏腹にとっても嬉しそうだ。なんだ、お前も俺のことわかっているじゃないか。

「それじゃ今日呼び出した本題に入る。」
「ちょっとー。私の話は無視ですか。」
「それにも答える。」

目の前の、手遊びで裂き尽くした紙ナプキンを左手に相変わらず三倍希釈くらいに薄まったコーヒーをずるずる音を立てながら飲む花子が。思い出し笑いしてにやけちゃうほど好きだと。
冷静さのカケラもなく伝えるよ。笑ってくれよな。

16時のコーヒータイム

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