うわ。あんた、今日死番なの?ついてないねー相変わらず。
緊張の研ぎ澄まされた空気を掃き去るように、沖田は愉しそうにせせら笑った。
なんなら私が代わってあげようか?私、無敵だもん。
自信満々に刀を携える姿に一切の迷いは見当たらず、そこにあるのは、真選組一番隊隊長としての確かな誇りと絶対的な自負だけである。しかし、永倉にも無論迷いなどは無い。ただ少し、固くなっていると言われれば、そうなのかもしれないと肩の力を抜くのみだ。
うるせえ。おまえは後ろで雑兵と打ち合ってろ。
永倉が言い返すと、ふんと沖田は鼻で笑った。
あっそ。ならせいぜい死なないことね。私、あんたの屍とか見たくないし。
それって心配してる訳?
永倉がからかうように言うと、沖田は冷ややかな目でまさか。と答えた。ただ、いいカモがいなくなると色々と困んのよね。そう言って興味無さそうに亜麻色の髪先をくるくると弄ぶ。
なるほどな。呆れたように笑いながら、永倉は自分の刀の柄に触れた。
相手もなかなかの遣り手らしいけど。
色艶の良い唇を綺麗に持ち上げると、沖田は真正面から永倉を見据えた。歳はさほど変わらないのにも関わらず、平生彼女からは気高い闘志が滲み出ている気がしてならなかった。そのことに微かなむず痒さを感じて、永倉はそっと息をついた。ああ、知ってる。副長から聞いたよ。だが俺達が奴等に劣ってるとは思わない。
そんな大口を叩いたのも、沖田から伝わるそれに感化されたのかもしれない。しかし、それが偽らざる己の本音であることは確かであった。まあ、ぼちぼちやってくるさ。それだけ言って刀を腰に携えると、沖田は何も言わずに前を空けた。
ご武運を。遅れて、沖田の澄んだ声が背中を押す。日暮れがもう、そこまで来ていた。









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