「俺、ポイントはどうでもいいかな」
「…そうやって言って俺のポイントでジュース飲むなよ、まこと」
自販機の前には男子が二人。女子が興味を示しそうなイケメン組だ。優しい顔立ちの少年と、少し怖そうな外見の少年。王子と騎士みたいだ。
のんびりと、二人はベンチに腰掛けていた。
「ねぇ、理人。これ、新しい武器じゃない?」
「お前が使う用じゃねえからな…」
「分かってるよ…!俺には理人っていう相棒がいるもん」
「ちょっと待て。俺はお前の武器じゃない」
王子が持つ綺麗な箱。どうやらあの中に武器が入っているらしい。
「ジュース代は働かなきゃね。さ、出ておいでよ」
「…いつから知っていたの?」
隠れていた筈なのに、彼にはバレていたらしい。
「君が来たときからかな。…あ、理人、今回は俺にやらせてね」
「はいはい」
騎士基理人くんはやれやれといった様子で頷いた。彼は外見こそ怖そうだが、案外根はいい人なのかもしれない。
「俺は、若王子まこと。私立高校に通う三年だよ。よろしくね」
「…闇城月子、都立高校一年。よろしく」
「じゃあ、闇城さん。早速始めよう」
ルールは至ってシンプル。武器の入った箱を若王子くんから奪えればオーケー。ちなみにハンデとして、若王子くんは三回までしか攻撃をしないらしい。ありがたい。
「…あ、待って。先に、中身を知りたいんだけど」
「残念ながら中身は開けるまで分からないんだよね。しかも既に武器を所持している俺たちは開けられない。でもこのサイズからするとかなりコンパクトな武器だね」
若王子くんからあの箱を奪うまで中身は分からないのか。それは仕方無いか。そう言えば若王子くんの傍にいる彼は何もしないんだっけ?
取り敢えず、若王子くんからの三回の攻撃を回避すれば必然的にあの箱は手に入るから──
「…熱…!」
どうやら、最初の攻撃らしい。私は炎に包まれた。…何だかおかしい。若王子くんはそれらしいものを持っていた?
「まこと、最初からやりすぎだろお前」
「えっ、そうかなぁ。でも、ジュース代早く稼いでおきたいから」
やりすぎ。ということは、若王子くんは割りと本気で私の邪魔をしているのだろうか。
私が炎を飛び越えるため助走をつけようとしたとき「あ」と若王子くんの声が漏れた。
「ジュース分のポイント溜まったね」
その瞬間、炎が消えた。何事も無かったかのように、壁や床が燃えた形跡は無い。
「はい、闇城さん」
「え、あ…ありがとう…?」
「まことはもともと戦うつもりはねえんだ」
箱を受け取ると、蓋が開いた。
「二丁拳銃だな」
「…私、これを探してた」
「良かったね、闇城さん」
あっさり、欲しかったものが手に入るなんて。拳銃は思ったより軽い。持ちやすくて、まるで私のために用意してあったみたいで気味が悪い。
「…ああ、そうだ。俺は、岸辺理人。まことの幼馴染み」
「親友くらいまで言ってくれてもいいのに」
若王子まこと、岸辺理人…。本当に、王子と騎士か。笑ってしまう。
「ありがとう、二人とも」
「俺たちは何もしてないよ。宝探し成功おめでとう。タブレットで確認してみて」
タブレットの電源を入れると、メッセージ受信という文字が表示されていた。
『パンパカパーン!闇城さん宝探し成功おめでとう〜!細やかなプレゼントで〜す!』
スライドさせていくと、ポイント付与の文字があった。100000Pと書かれている。
「十万ってことは、一番乗りだね」
「ポイントってどういう時に使うの?」
「タブレットには詳しく書いてないもんね。説明するね、理人が」
「は?」
岸辺くんは明らかに怠そうな顔をしていたが、説明をしてくれた。
鈴木学園で販売されている全てのものは現金ではなく、ポイントで購入する。参考書、文房具、食べ物、飲み物等何でも。ポイントを貯める方法は様々。
「ありがとう」
お礼を言って二人と別れた。まりあの所へ報告だ。
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