Sound Horizon | ナノ





身体の震えは少しおさまったようで、先ほどよりは感じない。次第にティリアからも私にすり寄ってきた。

「スコルピオス様の腕の中は…安心、します」

そう言ってきゅっと私の服を掴む。掴むその手の震えも大分おさまっていた。



それからどれくらいかわからないが、私はずっとティリアを抱きしめていた。抱きしめ、いつもと違う香りをかぎ、下ろしている髪に指を絡ませ、頭を撫で、しなやかな身体を離さぬように。
ティリアも私の腕の中でごそっと動く。私の胸に頬ずりをしたり、もう少しと寄ってきたり、甘えモードに入ったようだ。
よほど落ち着くのか、なかなか離れずにいる。震えももう止まっていた。
すると、静かにティリアが話し出した。


「…私、スコルピオス様と二人でいるときは、いつも胸の高鳴りがおさまりませんでした。だけどこうやって好きなだけくっついていると、安心します…」

ぎゅっと抱きついてくるティリアの髪に口付ける。
ふと、ティリアが上を向いた。
それを合図とするかのように、私は押しつけるような口付けをした。


「んん…!」


押しつけるだけの口付けのつもりが次第に深くなっていき、舌を絡ませる。
ティリアはまだこの口付けに慣れていないのか、最初は服や腕を掴んだり反発する。しかしそのまま続ければ、見事におちてティリアからも少しずつ絡ませてくるようになる。
掴んでいた腕も、支えとするだけになっていた。

「ふ、ぁ、」

くちゅ、と音を鳴らして唇を離すと、ティリアは肩で息をし、瞳はとろんとたれていた。顔を赤くしながらまた私に抱きついてくる。

「スコルピオス、様…くるしい…」
「息は口じゃなく鼻でしろと言っただろう」
「ん…はい」


ぎゅっとまた自分の腕の中に閉じこめる。髪を絡ませる。すとん、と流れるような髪は、とても心地が良かった。
ティリアがもそっと動くと、顔を持ち上げて触れる口付けを何度もする。角度を変え、唇を舐め、舌を絡ませ…。その行為を何度も何度も繰り返した。

何度目かの触れる口付け。
ただ、もう自分が限界なのが目に見えていた。
あんなとろんとした瞳で見つめられて頬を赤く染めて口付けの最中には口が開く度、酸素を求める度に小さく鳴く。好きな女に欲情するには条件として良すぎた。
深い口付けをしながら、緩やかにティリアの身体を寝台へと押し倒した。


「ス、コルピオス、さま…」
「…いいか」
「…はい」

ちゅう、ともう一度深い口付けをし、服の上から胸の膨らみに触れる。
ぴくん、と反応したのを見て、まだ触れるには怖がると思い、胸の膨らみに触れていた手を頬へと移動させる。

「大丈夫だ」
「はい…」

くす、と不安な表情を残したまま笑みを見せる。
その不安を取り除こうと、耳や耳の裏、首筋を撫で、唇でなぞるように触れた。

「スコルピオス様…」

首筋に顔を埋めていた私に、上から私を呼ぶティリア。

「もう、大丈夫です。もっと、触れてください」

私の手を取り、自分の胸へとその手をおく。少し息が上がり、上下している胸は、熱を帯びていた。


「本当に…いいんだな?」
「ふふ。大丈夫です。…きて、ください」


私はその唇に口付けを再度し、その後はティリアの身体を堪能した。





****



柔らかな白い肌。まだ男を知らぬ身体。
私を感じ、身体を飛び上がらせる。
二つの熱い身体は互いを欲し続けた。

二つを繋ぐ結合部からは鮮血が流れていた。


「スコルピオス、さまあ」
「…っ辛いか、」
「ぃ、あ…だい、じょぶです…!」
「…は、ぁ」
「あ、あぁっ 、ん、ぁ…き、すきですっ 殿下…!」

狭い中に私を受け入れながらも、懸命に私にしがみつく姿を見、さらに欲情したのは言うまでもない。
しがみつきながらすき、と言う。…無意識にしてもその甘ったるい声は私を刺激した。


「あ、あんっ ぃ…っ あぁあっ」
「…、ティリア…!」
「ひ、あぁあ!」
「っ…、く、は…!」
「す、こるぴ、おす、さま…、ぁあ…ン、っ、っあ、愛して、ます、愛してます…!」
「!!」


私もティリアももう最後の波が近づいてきた頃。ティリアは途切れ途切れにならぬよう、懸命に言葉を紡いで私に愛を囁いた。
結合部から聞こえるぐちゅぐちゅという音に消されないように、懸命に。
その言葉に驚きはしたが、動きを止められることは出来なかった。

快楽へと身を委ね、共に果てたとき、ティリアは私にしがみつきながら、小さく「大好きです…」と呟いた。



その後、服を着て私の腕の中ですやすやと眠るティリアに、私も愛を囁いた。


「私も、愛している…」












――――――……
――――…
――…


ピチュ、と鳥の鳴く声が聞こえた。部屋に入る日差しが、もう朝だということを物語った。
腕の中には暖かな温もり、小さな身体、愛おしい娘。

「…まったく、無防備な顔で寝ているな」

それだけ私の腕の中が安心したと言うことなのか。
すやすやと未だに眠りにつくティリアの髪をすくい、口づける。


「ティリア。朝だ」

頭を撫でながら名を呼び、目を覚まさせる。一人で起きていても詰まらんからな。

「ん…むぅ……」

身体をもぞっと動かし、丸めようとする。しかし私の身体がじゃまして丸まることが出来ない。それでやっと目が覚めたのか、顔を上へと向ける。

「おはよう」
「お、はよ…ございます…」

何故私の腕の中にいるのかわかっていないようで、口をぽかーんとあけているティリア。

「女が口を開けているなど、はしたないぞ」
「はっ す、すみません!」


謝った後、だんだんと昨夜のことを思い出したのか、ティリアは見る見るうちに顔を赤くする。

「あっあ…私!昨夜!!」
「あぁ、共にした」

かああぁと真っ赤にしたと思ったら、くるりと縮こまった。

「あの、私…っ好きとかなんとかとか色々言った気が…!」
「あ、あぁ」
「その、あの、申し訳ございません!本当、夢みたいで…」
「私もお前が好きだ」
「へ?」

がばっと顔を上げ、赤く染まったままの驚いた顔で私を見る。


「お前だけが言うのは不公平だろう?」
「あ、はい…」

私は優しくティリアの頬を撫でた。普段の、今までの私では考えられない行動だ。
頬の手は輪郭に沿っており、やがてティリアの唇を親指でなぜる。


「愛とは…よくわからんな」
「…そうですね」


再びティリアを自分の腕の中へと閉じこめる。昨晩と同じように、ティリアは私にすり寄ってきた。
服越しの体温が伝わってくる。



ああ、本当に愛とはわからぬ。

この娘が愛おしくてたまらない。おかしくなってしまったのかと思うほどに。

ティリアが私に愛を囁き続けるならば、私はいつまでもその愛に応えよう。



愛とは、暖かいのだな。






―――――――――
これが書きたかった…!
初夜完了!長い!

書き終わり 2009.03.19.
加筆修正 2011.09.08.
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