海賊 | ナノ

つながり



ボニーが去って十数分。ルフィがやっと大量の食糧を腹に詰めたところで雑談タイム。
ローはロビンと知識の話をしていて一部には理解できなかったために各々違う話題で盛り上がっていた。
キッドはルフィに頭のバンドを貸せとせがまれ、ゾロはナミ、サンジ、薙那にご飯粒がついている、とからかわれている。


「薙那」


そんな空間が薙那の名を呼ぶ声で砕かれる。後ろを見れば、そこには仮面を被った金髪の彼。

「キラー。どうしたの?」
「来月の担当は俺たちだろう。今のうちに案を練っておくように言っておこうと思ってな」
「あ!そうだった…ありがとう、忘れてたよ」

ふつうに続いていく会話に、口を挟むのはもちろんこの人で。

「薙那、キラーと知り合い、なのか?」
「はい、知り合いですよ。…キッドさんもローさんも、お知り合いなんですか?」
「…キラーは俺んとこのやつだ」
「へえ、そうなん…………えぇっ?!」

口に手を当てキッドとキラーを交互に見る。さあぁ、と顔を青ざめさせながら驚いた。


「あんたバカ?」
「ナミ…」
「こんな変な仮面被ってるのが普通の人に見える?」
「…見えない」
「それは俺に対して失礼じゃないのか」
「うそ、私、不良の人たちにはなるべく関わらないようにしてきたと思ったのに!」

キラーの言葉を無視し放った言葉に、その場にいた誰もが同じ事を思った。
ルフィと関わってる時点でそれくらいの覚悟はして置くものじゃないのか。
もちろん、ルフィ以外が全員思ったこと。

「ボニーだって同類よ?」
「ボニーは女の子だから…」
「(その基準はおかしいと思うわ)」
「うう、そっか…馴れ馴れしかったね、私」
「いや、別に構わない(むしろ普通に接してくること自体おかしいと思っていた)」

キラーが不良たちの一人だったのがよほどショックなのか、薙那は未だにうなだれていた。そんな薙那の頭にぽす、とキラーの手が乗る。


「そんなわけだが、今までと同じように接してくれると俺は嬉しい」

数回ぽんぽんと撫でれば今までの表情が笑顔に変わる。

「もちろん」

仮面で隠れてこそいるが、キラーのその下はきっと笑っているに違いなかった。



「あ、キャプテン!」

再び教室に渡る声。その声に素早く反応したのはローだった。扉の方へと視線を移したローはその姿を確認する。

「キャプテン?」
「ローは仲間にキャプテンって呼ばれてるのよ。ちなみにキッドは頭よ」
「へぇ」

ロビンと薙那の会話を横目で見ながら、ローは自分を呼んだ仲間をこちらへ呼びつける。近づいてくる数人の足を見て顔を上げれば、そこには薙那の知った顔があった。

「あれっ キャスくん」
「よっ」
「それにペンギンさん」
「キャプテンが邪魔をしている」


わあ、白クマさん。そう言った薙那は親しげに2人と話していた。
本日3回目となる質問が飛び出ることとなる。

「…知り合い、なのか?」
「はい。キャスくんは委員会が一緒で、ペンギンさんはロビンとクラスが一緒ですから」

ね、と言うとキャスケットが笑顔で肯定の言葉を返す。キラーはそれほど驚いた様子もなくキャスケットに話しかけた。

「ローさん、あの…白クマさん…」
「あ?ああ、俺んとこのベポだ」
「ベポさん?」

薙那がローの袖をつんつんと引き、隣に佇む白クマを見る。自分のことだとわかったのか、くるりと顔を薙那に向けて挨拶をした。

「アイアイ!君が薙那?」
「は、はいっ」
「キャプテンがいつもお邪魔してごめんね。お弁当持ってすたすた行っちゃうんだ」

本当ごめんね!
そう言って自分の手で薙那の手を包み込むベポ。瞬間、ぼっと薙那の頬が赤く染まった。
何か様子が変だと思い、ローが声をかけてみると、


「おい、どう「あわわわ!に、にっ ふ、ふわ、に…!」…は?」

突然両腕をぶんぶん振り回し始めた薙那に、ローもベポもびっくりする。ベポに至っては驚いて手を離してしまった。
顔を真っ赤にして単語の切れ端を口にしているようだが、何を言いたいかわからない。

「あ、あっ!そのっ」

少し落ち着きを戻し始めたが、未だに手をせわしく動かしている。かと思いきや、先ほど離れたベポの手をガシっと掴み、自らの頬に当てる。

「肉球…ふにふに…!しっかりピンクにふくれて…っ ああっ毛もふわふわで…はああっ」

幸せそうな顔でベポの肉球に頬ずりをする薙那。いつもの感じと違い、はじめてみる薙那の表情にキッドとローは戸惑っていた。

「じゃあ…」

そんな事をしらぬベポは、自分の肉球がそんなに気に入ってくれたなら、ともう片方の手も薙那の頬に添える。

「っぁ、…!」

ふに、とベポの柔らかい肉球が頬に触れれば、薙那の頬は赤く染まりふにゃりと笑顔を導いた。

「ふにふに…ふわふわ……はにゃあ…」
「へへ、なんか嬉しいな」

2人のまわりには花が飛んでいるような空気で、キッドとローは入り込むことができない。想像しなかった姿に声がでなかった、と言った方が正しいだろうか。

「お、薙那また始まったのか?」
「また?」
「にししっ 薙那は動物が好きなんだ!保健室に行けばずっとチョッパー抱いてるぞ」

そう言ったルフィに「なんだと?!」とローが反応する。

「おい、ベポ。いい加減にしろ」
「え、なんで?」
「俺がしようとしてもやらせてくれないくせにか…!」
「女の子は特別だよ」



ベポはそのまま、チャイムが鳴るまで薙那に構っていたという。
こうしてベポは薙那のお気に入りの先輩となる。




ちょっと小話


2010.11.
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