誰かの為の協奏曲 | ナノ
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彼女は書き上げたファイルの中身を確認し、溜息を漏らす。

「ユートピアのこととなると、文章が雑になっちゃうし…わたしがわたしじゃないみたいになっちゃう…」

頭を抱える。けれど、後悔はしていない。胸の中で暴れる思いを吐き出すことができたし、そして何より…決心がついた。

「ハトリ!」

母親が部屋に飛び込んでくる。驚いて振り返ると、母親は必死の形相だった。手には電話の子機。

「あなた、何のつもりなの?!」

「…何って、電話の通りよ」

「ふざけないで!」

母親が怒っているのは分かる。けれど、それでは彼女は揺らがない。

「芸能事務所なんてあなた…本家の許可を取らずにそんな勝手なことをするなんて」

「鶴日お兄様の許可はもう取ってるわ」

ハトリは一旦母親から目を逸らし、書き上げたファイルをゴミ箱までドラッグする。そしてもう一度母親に向き直り、立ち上がった。

「わたし、歌う」






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