novel | ナノ
「天子さま」

天子は何も言わない。

「紫梟が逃げてしまいました」

純白が天子の首に腕を回す。

「紫梟の口から、我らの計画が筒抜けですが如何いたしましょう」

天子は何も言わない。

「………ですよね、それでも、実行いたしますよね」

純白が天子の唇を指先で撫ぜる。

「えぇ、えぇ。天子さまのお考えはよく分かっておりますゆえ。お口を開く労力すら使わせません」

天子は何も言わず、閉じていた瞼を開く。

「天子さま、もうすぐです」

純白は恍惚とした笑みを浮かべる。

「もうすぐ、あなたがこの世で唯一の神になる」

天子は何も言わず、目を閉じる。

「同志たちよ」

純白が手を広げる。

「全ての神を殺しましょう」

歓声が、天子の耳に届いた。







[ back to top ]