ローレンと同じ色をした女神が、その青い目を細めて呟く。え、とローレンは息を詰まらせ、女神から目を逸らした。 「知ってるわよ。あなたと"同じ"男でしょう?あなたが彼と会った日は必ず男の匂いがしていたわ」 「……そ、そうです、か、め、メディアさま」 「知ってるわよ。ここ最近毎日会ってるんでしょう?けど、最近は匂いがしないわ」 復讐の女神、メディアが言わんとすることを察し、ローレンは顔を赤らめて目を伏せる。 「無能なあなたに女としての…いいえ、メスとしての利用価値を見出してくれていたのに、ふふふ、残念ね」 「…い、いいんです、心地の良いものでは、ありませんでした、から、…けど…」 「…けど、何?」 ローレンは顔を伏せたまま、体だけメディアの正面に向ける。前髪の隙間から、潤んだ青い目がメディアをちらちらと見ていた。 「わたしは、いいんです、けれど、彼は、わたしじゃなきゃだめなんじゃないかって、というか、今、実は、彼、とてもくるしいんじゃないか、って」 言葉を紡ぎながらぽろぽろと涙を零すローレン。しかし、彼女を見下ろす女神の視線は冷たい。メディアは玉座に座ったまま頬杖をつき、目を細めた。 「自惚れているの?」 はっと、ローレンは顔を上げた。氷のような青い視線がローレンを突き刺す。痛みすら感じさせる冷たさに、ローレンの涙は止まることを知らない。 まるで戯れだと言うように、メディアはローレンから視線を外す。そしてゆったりと脚を組み替え、溜息をついた。 「まぁ、あなたのことも、勿論彼のことも、わたしにはどうでもいいことだけれど。…ねぇローレン」 主人に名を呼ばれ、ローレンは顔を上げる。顔をぐしゃぐしゃとこすり、なんとか涙を押し殺して「はい、メディアさま」と震える声で応えた。 「"星月夜の森"には、力が眠っているわ。それにベルキスが気付く前に、力を回収して欲しいの」 「………はい」 「けれど、少し難点があるの」 難点などと言いながら、メディアの口には笑みが浮かんでいる。ごくりと唾を飲み込み、ローレンは言葉の続きを待った。 「深層に眠るそれを引き出すには、人柱がいるのよね」 …血の気が引くのを感じた。主人が下すであろう命令を予測して青ざめるローレンを見て、それでもメディアの顔から笑みは消えない。むしろ、笑みを深めて彼女は部下に非情な仕事を命じた。 「死んで頂戴、ローレンスレキシィ」 [ back to top ] |