背後から聞こえた声に、ローレンは肩をびくつかせる。振り返れば、暗闇の向こうから赤い目がこちらを見ていた。 「……め、命令だもの」 ローレン…正式名称ローレンスレキシィは、薔薇戦争と呼ばれる少女の模造品である。人間ではない。そして上司たる復讐の女神、メディアの命令により、"星月夜の森"と呼ばれる森の中にある湖の偵察に来ていた。そしてそこで、この男と遭遇した。 ローズローザ。ローレンと同じく、薔薇戦争の模造品。しかしローレンとは違い、性別こそ男であるものの、オリジナルである薔薇戦争と同じ色合いだった。ローレンは女だが、色合いは黒髪に赤い目を持つ薔薇戦争やローズローザとは真逆だった。彼女は、白髪に青い目を持っていた。 「まぁ、お前がいることは薄々感じてたけどな」 彼はおどけたように肩を竦めながら、ローレンに歩み寄る。ローレンは後ずさるが、湖の淵にまで追いやられては動けない。 「なぁローレンスレキシィ。なんで俺は、お前がいると思ってここに来たと思う?」 にやにやと嫌な笑みを浮かべながら、ローズローザはローレンの腕を掴む。ローレンは抵抗するが、何度か足を踏み外しそうになるのでまともに動けない。 「溜まってんだよ、俺」 不意に耳元で囁かれ、ローレンの体が震えた。その意味を理解して、しかし負けじと彼女は微力ながらも抵抗を続ける。 「そ、そう言ってあなたは、こ、この間も、その前も…その前も、ずっと、ずっとずっと前から、あなたは、わたしに変なことしてるじゃない…!」 言い返しながらも、徐々にその目には涙が溜まっている。やはり男の力に敵うはずもなく、ローレンはあっという間にローズローザに押し倒された。風に吹かれ、草木が揺れる音がする。 「なんだよ、気持ちよかったくせに」 ローズローザの言葉に、ローレンは目を見開く。涙が頬を伝う。 「そ、そんなことないもん…!気持ちよくなんかなかったもん、嫌だったんだもん…!」 堰を切ったように涙が溢れ、声が嗄れる。それを見下ろすローズローザは一瞬目を見開くも、すぐに笑みを取り戻し、押さえつけているローレンの両腕を頭の上で拘束した。とうとうローレンは泣き叫び、嫌々と首を横に振る。しかし、全ては無駄だった。ローズローザはローレンのスカートの中に手を伸ばし、太腿を撫でる。 「お前がどう思ってるかなんてどうでもいい。……俺を楽しませろよ、ローレンスレキシィ」 [ back to top ] |