SS | ナノ






::それは女神の悪戯

運命だと思った。高校で倒れ、目が覚めたら不思議な建物の中にいて。兄が組織した秘密結社である、と聞いて、不思議と疑問に思うことはなくて。何より、ようやく自分が必要とされているという実感を得ることができた。それだけで彼は、今ここに来られたことを運命的だと思った。

そしてそれは、運命の出会いだと思った。
どうやら彼の力は希少らしい。それ故に、強い者がいつでもそばにいてくれるという。強い者、と聞いて屈強な大男を想像していたが、それは容易く覆された。
美しい少女だった。艶やかな黒髪、白い肌。薔薇の花を彷彿とさせる赤い目は、彼を見つめてすうっと細められる。今ここで初めて会ったのに、運命の出会いだなんて思ってしまった。

「あなたが流沙?」

凛とした、耳に心地の良い声だった。それさえも美しいと感じてしまうほど、彼は、流沙は、彼女の美しさに溺れてしまったらしい。見惚れて返事さえできずにいると、「答えなさい」と彼女の語気が荒くなる。慌てて頷けば、彼女は息をつき、表情を少しだけ柔らかくした。

「わたくしは、薔薇戦争」

「……薔薇、戦争」

腰に差した刀を見て、流沙は成る程と相槌を打つ。薔薇のような美しさに戦争の文字を戴く勇ましさ。ますます彼女の魅力に引き寄せられてしまう。
その時、顎に冷たい何かが触れ、くいっと顔を上げさせられた。視線を下ろせば、彼女がいつの間にか刀を抜き、流沙の顎を乗せていた。

「足手まといになるようなら斬るわよ、新入り」

思いの外、激しい性格なのは窺い知れた。しかし、彼女になら斬られてもいいなんて思ってしまった、なんて、そんなこと。






流沙×薔薇戦争(一番目にリプで指定されたキャラが二番目に指定されたキャラに惚れたらどうなるか想像して書く)





 

2014.10.05 (Sun) 18:53


back


prevtopnext