::ある家の朝 「青葉さん!有給もらえた!」 「そう、じゃあIKEOで子供達の本棚買ってきてくれないかしら」 勿論!と意気揚々とした様子で拳を握る夫を見ることもなく、青葉は台所で朝食の準備をしている。すると、二階から子供達が眠い目を擦りながら降りてきた。 「おはよう、おとうさん、おかあさん…」 「おはよう!みんな聞け!今日はお父さんがお休みだ!だからお買い物に行くぞ!」 ほんと?!と眠さの吹き飛んだ笑顔を浮かべ、子供達ははしゃぎ出す。 「ねぇおかあさんは?またいそがしいの?」 「えぇ、ごめんなさいね」 「青葉さんが美味しいお昼ご飯を作ってくれるから、お父さんとお前達で行くぞ!」 「朝ご飯もまだなのにそういうこと言わない」 青葉がぴしゃりと言えば、夫は「はーい」と笑顔で応える。「あなた達も着替えてきなさい」青葉が子供達にそう言えば、「はーい」と笑顔で応えて再び二階に上がっていく。 「…緋月」 「ん、どうしたの、青葉さん」 青葉は包丁を置いて夫の方を見る。そして夫の方に歩み寄り、彼の肩に手を置いた。 「子供達の前で青葉さんって呼ばないで」 「…………え」 「お母さんって呼びなさい、お父さん」 そして再び台所に戻り、包丁を動かし始める。妻の後ろ姿を見つめ、彼は嬉しそうに笑った。 (×Renaissance) 2014.08.18 (Mon) 21:27 back |