::せつりお へっくし、と季節外れな声が聞こえた。 ソファに座って本を読んでいたリオが首を巡らせると、隣に座っていたはずの刹那はソファの一段上、即ち背凭れ部分に座っていた。紫のマフラーを軽く引っ張り、口元を覆っている。 「……寒いのか?」 「…うー、ちょっと」 季節は夏だ。むしろ暑いのではないか、だがしかし彼は鼻をぐずつかせ、マフラーの生地の肌触りを楽しむように口元に擦り付けている。 「…風邪か?」 「僕の体は風邪菌寄せ付けないよ……寄せ付けないっていうか、体に入った風邪菌は時間が早送りされて即死滅する」 …ふうん、と軽く流してみるが、やはり心配なものは心配で。しかしここで心配な素振りを見せるのもなんだか照れ臭くて、リオは再び本に視線を落とす。 すると、ぎしり、とソファのスプリングが軋んだ。本のページに影が差す。リオが顔を上げると、そこには身を屈めた刹那がいた。 「…寒いよ、リオ」 「………」 「ぎゅってして」 有無を言わせず、刹那の腕がリオの首に回される。マフラーが頬をかすめてこそばゆい。 「…仕方ないな」 暑いけど、刹那だからな。そう小さく呟いて、彼の真似をするように彼の首にも腕を回した。 2014.08.04 (Mon) 23:51 back |