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::なみだざくら

放課後の部活動で、いつも見かけるあの人の姿がなくて。
学校お休みなのかな、って思ったけどなんだか胸の奥がざわざわして。
先生が暗い顔で、「玉城さんが亡くなりました」って言ったのが耳の奥に残ってて。
目の前が真っ暗になったような気がして、ふと気がつけば私は屋上に続く扉の前に立っていた。

その扉の前には立入禁止を示す黒と黄色のテープが貼られてて、先生の言葉が嘘じゃないことを物語っているようで。
足に力が入らなくて、重力に負けたみたいに体からも力が抜けてしゃがみ込んじゃって。
目の奥が熱くなって。
頭が痛くなった。

「御幸!」

体中の水分が目元から溢れ出ているような錯覚を覚えた時、私を呼ぶ声を聞いた。

「……つる、ひ」

彼の赤い目が頷いてくれた。私は彼の制服を掴み、彼の制服を濡らすことも厭わずに声を上げた。

ある春の日の、ことだった。



Lach u fy, Jyju

(もうしばし待つのよ、寿限無)



Renaissance)
 

2014.07.29 (Tue) 17:13


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