::じゅげむと希望 彼女は全てを捨てた。顔を隠し目を塞ぎ口を閉ざした。何も知らなければ、何も見なければ、何も話さなければ、何も失わずに済むと思っていたから。 「まるで泳ぐのが怖いペンギンのようですねぇ」 空はそう言った。愉快そうにすうと目を細めて彼女を見ていた。 「何の解決にもならないでしょう?逃げているだけでしょう」 「否」 「イエスかノーしか話せないなんて、あぁなんて可哀想に!…あぁ、話せないんじゃなくて話さないんでしたね」 「否」 「俺があなたに希望を見出してあげましょうか?」 「だ、まれ!」 いちいち人の心を抉るようなことばかり。何が希望だ。絶望を齎す希望の空め。 「まぁせいぜい足掻いてくださいね」 空はすうと夜に溶けた。 2014.07.29 (Tue) 13:34 back |