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::双薔薇

背中と頭に重みを感じ、ローレンは息を飲んだ。目線だけで見上げれば、ローズローザが彼女の頭に顎を乗せ、後ろから彼女を抱き締めている。あまりにも唐突なことだったので、ローレンは何度か目を瞬かせてわななく唇を動かした。

「……ど、どうかした…?」

「別に」

僅かにローズローザの顎が浮いたのを感じ、ローレンは首を動かして彼の顔を見上げる。彼の赤い目はローレンを見てはいない。が、不機嫌そうに唇を尖らせ、ちらりと彼女を見下ろした。

「なんだよ」

「…なんでもないよ…」

やりきれなくなったかのように慌てて顔を逸らせば、あっそ、と彼の視線も外れる。彼と触れていられることは嬉しいのだけれど、態度が素っ気ないだけでなんとも言えない悲しさに駆られる。
はぁ、と頭上から溜息が聞こえた。同時に、体が揺らいだ。思わず小さな悲鳴を上げてしまうが、気づけば床に尻餅をついていた。彼がローレンを抱き締めたまま背後の壁に向かって座り込んだのだと理解した。
ローレンの体を抱き締める腕に力がこもるのを感じた。彼女は彼の手に手を重ね、彼に身を委ねる。

「…わたしね、」

もう一度彼の顔を見上げれば、彼の揺らぐ赤と鉢合わせた。手を伸ばし、彼の頬を撫でる。

「こうやってローズローザに抱き締められるの、大好きだよ」

彼は自分の頬を撫でてくれるローレンの手に手を重ね、目を閉じる。

「無能のくせに生意気」

小さく笑いながら彼女の髪を撫でる。手が滑り、彼女の頬を撫でる。そして最後に唇をなぞり、彼女の体をきつく抱き締めた。

「……俺も、好きだよ」



 

2015.02.08 (Sun) 16:18


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