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::光の闇

首にかかるぬくもり。それは、大好きな父の手。

…これは、夢?

けれどその手がじわじわと力を込めているのを感じて、父の顔を見れば泣いていて、父さん、ねぇ、どうして、

「ごめんな、ひかり」



「?!」

飛び起きた。嫌な汗が額を伝う。
忘れたいことほど忘れられない。忘れたいことほど夢となり、毎晩ひかりを苦しめる。ひかりは頭を抱え、重い息をついた。
そこで、ひかりは自分の体にブランケットがかけられていたことに気付く。一体誰が、首を巡らせれば、すぐに答えは見つかった。

「…魘されていたけれど…大丈夫?」

その姿を認め、その声を聞いたところでひかりは逃げるようにベッドから下りた。「…、ひかり、」凛とした声に名を呼ばれれば、首の痣が疼くような気がした。
薔薇戦争。彼女は心配げな様子でひかりを見ていた。しかし、ひかりはそんな彼女を睨めつけて舌打ちをする。その呼吸は荒い。

「……なん、で、いるんだよ」

「あなたが部屋から出てこないから…」

「…勝手に、入るなよ…」

「…ごめんなさい、けど、心配で……」

「誰も、心配してくれなんて、頼んでねぇだろ…!」

喘鳴と共に唸るひかり。薔薇戦争は困ったように視線を彷徨わせるが、やがてひかりの方に歩みを進めた。

「………ごめんなさい、ひかり」

ひかりは目を見開いた。
その声すらも憎いというのに。その声で、

「親父と同じこと言ってんじゃねぇよ!」

腹立たしい。怒りに身を任せ、ひかりは薔薇戦争の肩を押した。いきなりのことで体勢を崩す薔薇戦争の上に跨がり、ひかりは彼女の細い首を掴んだ。

「お前の、所為、だ」

呼吸が苦しい。痣が疼く。まるで見えない手に首を絞められているような.薔薇戦争の首を絞めれば自分の首まで絞まるような、そんな苦しみ。しかし、ひかりはやめない。薔薇戦争が生理的な涙を流しながらひかりの手を掴んで掻き毟るけれど、その力を緩めない。

「お前の所為で苦しいんだよ!」

口を動かして酸素を求める薔薇戦争を見下ろし、ひかりは叫ぶ。自分の首の痣を撫でながら、やがてひかりはにやりと笑った。

「オレはお前にいろんなもんを奪われた。それがどうしようもなく苦しいんだよ、だから、」

彼女の首から手を離す。ひかりの首と同じように、青紫の痣が薔薇戦争の首に浮かび上がる。そしてひかりは、咳き込む薔薇戦争の前髪を掴んで引っ張り上げた。

「オレより苦しい思い、させてやるよ」



 

2015.01.09 (Fri) 22:56


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