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::クリスマスプレゼント

「ねぇ、流人」

ソファに並ぶ二人。薔子は流人の肩に頭を乗せ、彼の名を呼んだ。彼は横目で薔子を見下ろし、微笑んで「なに?」と聞き返す。

「わたくし、クリスマスなんて大嫌いだったの」

彼の手を取り、指を絡めて握り締める。彼の手は少し冷たかったが、熱を分けるように薔子はさらにきつく手を握った。

「他の人たちがクリスマスに浮かれているのを見るのが嫌いだった。わたくしは何故こんな日に生まれてしまったのかしら、ってずっと思ってたわ」

一旦手を離し、彼の腕にしがみつく。そして腕を絡めたまま、もう一度手を重ねた。

「それをお母様に言ったらね、すごく怒られたの。…『あなたは、私が莢花さんに、そして莢花さんが私に贈ってくれたクリスマスプレゼントです。それを悪く言うのは許しません』って」

薔子は流人の肩から頭を動かし、彼の顔を見上げる。青い毒が、優しい色をして薔子を見ていた。薔子は照れ臭そうに頬を染め、彼の目をじっと見つめる。

「それから、好きになれた気がしていたの、クリスマスが。けど、あなたと出会って、お母様の言葉の意味が分かった。そして、クリスマスを好きになれたっていう実感をやっと得たの」

彼の目尻が緩む。柔らかな笑みが薔子に降りかかる。薔子がついと顎を伸ばせば、流人はその顎を白い指で掬い、引き寄せた。触れ合う唇と唇。離れる頃には、二人の口元には微笑。

「わたくしは、あなたへのクリスマスプレゼントになれているかしら」

流人は笑みを崩さない。薔子の言葉に返事をするように、もう一度口付ける。そして鼻梁、瞼、額に口付けを降らせ、最後にまた唇へ。

「勿論だよ、俺だけの愛しい薔薇の花」



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薔薇戦争はぴばその2
 

2014.12.25 (Thu) 08:31


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