::聖夜の贈り物 世間で騒がれるクリスマスだが、彼女にとってはそれ以上の意味がある。毎年この日に送られてくるプレゼントの山に埋もれ、薔子は溜息をついた。 「お嬢様ぁ、お手紙や電報、目を通されましたぁ?」 「ここまで読んだわ。お返事よろしく」 「はぁい」 従者の鬼が紙の束を受け取り、薔子のそばを離れる。薔子は頭を抱えながら、定型文のような祝いの言葉の羅列をひたすら読み続けていた。 …目が疲れてきた、そう思い、薔子は一旦紙の束を机に置く。そして手近にあったプレゼントを手に取り、封を開く。香水だった。脇に避け、別のプレゼントを取る。封を開く。高級な茶菓子だった。 「…ローレン、」 「は、はい」 「この辺のものはわたくしの部屋に運んでおいて。あと、ローズローザ、」 「何」 「食べ物類は厨房へ」 同じ顔をした二人の従者に荷物を任せ、薔子はソファに身を横たえる。ただただひたすらに疲れた。一旦休もう。 「お嬢様」 ふと、落ち着きを孕んだ穏やかな少女の声がした。「なぁに」自分でも驚くほど気怠げな声が漏れた。 「お客様が来られています」 「……そう、お通しして」 基本的に直接の面会は断っているし、最初から請け負ってすらいない。それを無視して来るとは良い度胸だ。そんな軽い気持ちと共に薔子は体を起こし、客を待つ。 そして、扉が開く音がした。 「薔子」 いつも近くにある声がした。薔子は目を見開き、立ち上がり、扉の方に駆ける。その目に映るのは、愛しいひと。 「流人!」 彼に腕を伸ばせば、彼も腕を伸ばし、薔子を抱き締める。彼の首に腕を回し、その白い髪を掻き抱くように薔子は彼の肩口に顔を埋めた。 「誕生日おめでとう、薔子!」 彼からの祝いの言葉が、一番のプレゼントだ。 _____ 12/25 薔薇戦争はぴば 2014.12.25 (Thu) 06:01 back |