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::精霊達の戯れ

「ベルキス!」

ふと腰のあたりに衝撃を感じ、ベルキスは嗜んでいた横笛を下ろす。そして肩越しに振り返り、跳ねる白を認めて目尻を緩めた。

「どうかしたの、メディア」

白い少女…メディアの髪を撫でてやりながら、ベルキスはふと手を止める。そして彼女の髪を掬い取って生糸のようなそれをまじまじと見つめた。

「アナタ……埃っぽいわ」

軽く手櫛を通すと、メディアはくすぐったそうに微笑む。ベルキスもつられて笑うが、ふと髪に触れる手が止まった。

「…それからアナタ…血の匂いがする」

眉を顰めてメディアを見下ろすが、彼女は相変わらず屈託のない笑みを浮かべている。その笑顔に折れ、ベルキスは溜息をついて身を屈めた。そしてメディアの頬を両手で包み込み、目線を合わせる。

「いい?メディア。良い子なんだから、悪いおとなには気をつけなさい」

そこでようやくメディアは笑みを消して頬を膨らませる。

「わたし、良い子は嫌よ」

ベルキスは再び溜息をつき、膨らんだ頬を摘まむ。ぷふ、と息が漏れ、メディアはみるみる赤くなる。そんな彼女を見て、ベルキスは笑んだ。

「とにかく心配かけさせないで頂戴」

…はぁい、と頷くメディアの髪を撫でるベルキス。良い子よ。そう言ってやれば、メディアは少し俯きながらも小さく笑った。



 

2014.11.07 (Fri) 17:11


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