◆◆◆

悪いことが生じると悪いことが連続にして起こるものだ。
紫木月濔音もまた、悪いことが連続に起こり最悪な事態に陥った。

最初の災難は、全身複雑骨折をしているためゴミ捨て場から出られなかった。

昔は、曜日事にゴミを分別し、ゴミ捨て場に、ゴミ袋を持っていくことが当たり前だった。しかし、今現在は、曜日事にゴミを分別しないといけないが、台所に設置してあるボタンを押すと開く引き出しのようなスペースにゴミが入ったゴミ袋をいれると今濔音がいるゴミ捨て場に落ちる仕組みとなっている。勿論このゴミ捨て場は、科学の進歩により周りのマンションに匂いが影響されない仕組みになっているが、ゴミそのものは消えない。悪臭だ。当然人は来ない。

昔から、濔音は狭い所や暗い所は嫌いだった。今も苦手だ。車内や、穴倉、ましてやゴミ捨て場なんて、もっての他だ。ゴミで蹲り、ゴミの山に圧迫され息がしにくい。暗い。正に最悪だ。喩え生き延びたとしても生き地獄でしかない。

回復を待ち(痛みに慣れるまで)
濔音は、マントからバタフライナイフでゴミを切り捨て、ゴミの山から落下した。
「〜っっっっっ!!」
言葉にならない痛みが濔音を襲う。濔音は、ゴミの中にある固定出来るものを探してかき集めてから、長年愛用した外套(マンションから落ちる時ちゃっかり持っていた)を二つに破き、特に酷い骨折をしている箇所にくくりつけ応急処置する。
「‥ただの気休めだけとね。まあ、自業自得だし。仕方ないね」
ー。首から脊髄らへんも痛かったんだけど‥動けるから大丈夫か‥。

以前紫木月の医療班から貰った痛みどめの薬と、熱をさげる薬を飲む。雨のおかげで、匂いは消えたし、暗い狭い所から抜け出せることが出来た。
ーこれでなんとか大丈夫。僕は、生き延びることが出来る。

そう思ったのも束の間だった。

着ている服が破ける。
某かの有名な作品の女主人公のような大胆な破けようではなかったが、スカートやトップスが切り刻まれ皮膚まで切れた。鎌鼬だ。
濔音は、ゆっくり立ち上がり、見えない敵に向かって口を開いた。

「鎌鼬とは随分酷いことをするじゃないかい。僕のおNEWのトップスと、お気に入りのスカートをどうしてくれるんだい?それに、待ち伏せなんていい御身分だな。ああ、成程。僕が、この素敵なゴミの山から出てくるまでそこで待機していたのかい?雨の中、実にご苦労だったね。‥何を隠れているんだい?君は、殺人鬼を仕留めるために来たんだろ?悪いことをしていないのに、こそこそ攻撃するなんてみっともないと思わないかい?だったら、僕から行くよ」

濔音は、毅然に言い放った。大きな声ではなく、相手に聞こえるような声で耳に残るような口調だ。
微笑し怯える様子は見せずゆっくり歩いた。
敵は、傷を受けた血まみれである身体でありながら毅然として歩く少女に驚きを隠せずにいるだろう。
案の定、敵を見つけた時呆然として濔音を見ていた。敵は、角を曲がったすぐそこにいた。
敵は青年で、鎌を握りしめていて、若葉色のカジュアルな服を着ていた。苦笑した。ああ、なんだ。黄川日じゃなかったんだ。敵は、我に返ったようにハッとした。

「‥よく喋る女の子だな。君は、本当に紫木月なのか?」
「おやおや、額にある三日月の痣が見えないのかい?ーああ、もしかして確認をとってるのかい?僕が紫木月だと確認するために雨の中待っていてくれたんだ。律儀だね」
敵の頬が赤くなった。そして、癪にさわったように、声を荒げた。
「お前等みたいに、おれは、殺人鬼ではないからな!紫木月と分かれば、もう用はない!おれは、紫木月ハンターとしてきみを殺す!」と鎌鼬をする。

濔音はギリギリでかわし、暗器を投げつけ敵を壁に張り付けにする。

「うん、我ながら鮮やかな芸当だ。この芸当を教えてくれた家族に感謝しないとね」
「くそ!離せ!」
「味方に離してもらうんだね」
濔音は、去ろうとした時。
一瞬気が抜けていたのだろうか。
濔音は、図体のでかく人相が悪い男に投げ飛ばされた。
壁にあたり、気絶しそうになった。
「ぼっちゃん、大丈夫ですかい!お助けします!!」
「相馬(そうま)!」
「‥っ」
ーああ。こいつなら知っている。鵲相馬(かささぎ そうま)時宮家(ときみやけ)が雇っている殺し屋。ということは、この鎌鼬を使う青年は時宮家の坊ちゃんっていうことかい。面倒だな‥。時宮は、鎌で鎌鼬を出したり、呪術で結界を張ることが出来る家系で、ここ最近紫木月ハンターを名乗っている。最悪だな‥。

「殺されるなら、‥正義の味方に殺されたかったなぁ‥」

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -