南側の高槻を見習って、この街の住宅地も一戸建の家が連なる街にして欲しいものだ。まあ、自分が高級マンションに住みたかったせいでもあるが‥。そんなことを思いながら、黒斗は、土砂降りの雨の中、高級住宅街をあのサンダルで走っていた。

目的は、一つ。
殺人鬼である紫木月濔音を見つけるため。

ー。どうかしている。盗んだ殺人鬼をみすみす46階のマンションから落ちるのを呆然と見ていたなんて。マンションのすぐ下のゴミ捨て場を見たが彼女はそこには不在していて夜が明けた今でも捜して
いるとは。大失態だ。仮にも、怪盗なのに盗んだものに逃げられるとは。

逃げられる?
あの高層マンションから落ちたのにか?
否、紫木月の身体能力なら生き延びていても不思議ではない。紫木月は、生まれた時から、殺人鬼の業があるため黄川日やハンターから狙われている。生き延びるため、運動能力を鍛える教育がされていると聞いたことがある。まあ、元々、紫木月は異常なほどまでに身体能力が高いため高層ビルから落ちても死なない方が確率は高い。
しかし、同時にそれらの人物達に殺される確率も高い。正義のヒーロー気取りかと思うが、これが通常か。この世は因縁因果。因果応報。人を殺した者は、何れかは人に殺される。因果とはそういうものだ。
ということは、こんなに捜して見つからないのは、捜し方が甘いのか、もしくは家に戻ったか、もしくは殺されたか。
分からない。この住宅街一体をこまなく捜したがいない。
「一体何処だよ‥濔音」
ー。仕方ない。あいつに連絡するか。あいつー‥。否、あいつは駄目だ。俺は、あいつに死んだと思われているしな‥。じゃあ、誰に?

その時声がした。

「濔音?」
「!?」
黒斗は、ぴくっと反応した。ふり返ると少年が黒斗を見ている。最初に目を向けたのは左手に持っている学ラン。次にタンクトップを着ている。髪は、青色に染めたのか、モミアゲは黒い。ズボンは、学ランから中学生か高校生位だ。それよりも、ランニングでもしたのか、少年は息を切らして黒斗に近付く。

「お前、みー知ってるのか!?」
「あっ?みーって?つーかお前何?ってか誰?」

ふと気付いた。左腕に、三日月の痣がある。こいつは‥紫木月だ。濔音
と「みー」は同一人物であり、黒斗が捜している人物である。

「俺?俺のことは、どうでもいいゲハよ!それより、みーはどこゲハか!?‥まさか‥ここにも追手が?あいつらの気配がする」

すると、紫木月の少年は走り出した。

「ちょっ‥待て!!」
少年は止まった。
「俺も行く。お前紫木月で京都生まれだろ?濔音から聞いた」
ー濔音から聞いたっていうことは嘘だ。だがこいつを信用させるのは、濔音の名前だろ。
「育ちは分からねぇが、高槻の土地は知らないだろ?だったら案内してやるよ」
少年は、黒斗の側まで瞬時に戻ってきた。早い。そして、黒斗の手を握りしめブンブンと握手をした。

「ゲッハー!!お前いい奴ゲハね!自己紹介は後でいいか?今は、みーを捜すことが一番だから。悪いけどここの道案内宜しくお願いするよ。その代わり俺は、みーを絶対に見つけるからさ。」

少年は、黒斗を見て続けて言った。
「お前もみーを‥濔音を捜しているんだろ?みーとどういう関係か知らないが、今はそれどころじゃないから」

少年は、にかっと笑ったがまた表情が陰る。黒斗は、察した。
この少年は、巫山戯た口調をしているがどうやら馬鹿じゃないらしい。





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