「人を愛する殺人鬼なんざそうはいねえ。人間は、人が憎いから人を殺す。人間は、人が妬ましいから人を殺す。或いは故意で、或いは不注意で、或いは事故で人を殺す。或いは、狂気で。或いは歓喜で。或いは自己啓発で。人が人を殺すなんざ何かしら動機や理由がある。だけど、お前は合間を愛しすぎて殺した。それだけだ。他に理由はないんだろ。他に動機なんてないんだろ。愛して殺されるなんて、お前のことを好きになった奴は幸せだろ。だって、好きな人に…」「これ以上しゃべるな!」

布団を飛び出し、黒斗の首を持つ。
震える手で、黒斗を威嚇するように睨む。だが、殺気はなかった。殺意も感じとれない。濔音は、首を絞めずゆっくりはなし、腕を落とした。沈黙。三分間声も息も何もかも音が消えた。

「…他に理由?さあ。あるかもしれないし、ないかもしれないね。それに純粋なんかじゃない、不純だよ。『人を愛して人を殺す』なんて酷い動機だよ。一番あってはならない動機。僕は、探偵だった合間さんの誰よりも近い所にいた。だから、人を殺すことはいけないことだと知っていた。痛い程知っているのに…分かってるのにね。ころしちゃったんだよ。1番ころしちゃいけない人を。そんな、殺人鬼を君は今慰めようとしてなかったかい?そんな殺害動機を君は正当化しようと…許そうとしていなかったかい?だったら、喋るな!決していい言葉なんてかけようとするな。決して僕を許すな。決して僕に優しくしないでよ…。合間さんに失礼だよ。合間さんの生きる権利を僕は…奪ったのだから…」

濔音は、目をこすった。泣かないと胸に誓った目に溜まった涙を拭うためだ。泣いてはいけない。自分が犯した罪を同情なんてされたくない。むしろ、罵り軽蔑されたほうがましだ。濔音は、黒斗をまた見る。泣いてない。という風に。
黒斗は、頭をかいて身を起こして、それから白銀の頭をポンポンと撫でた。

「わるかったな。目撃者の俺があーやこーや言って。その赤い布団。気分悪りぃだろ。替えてやる」

黒斗は、ベッドから降りてロッカーを開けて、生成り色の布団をなげた。ついでに、寝室にある冷蔵庫を開け、水が入ったペットボトルを持って濔音の前に置いて寝室から出て行こうとした。

「待って。ごめんなさい。大声出して。…水ありがとう…。後、僕が出るから」

濔音は、立ち上がり寝室にある窓を開ける。

「おいおい。そこから出るんじゃねぇだろうな」

46階の高級マンションだここは。自殺する気か?いつでも、止められる準備はしている。なのにー…。

「じゃあね、ありがとう」

銀髪の人を愛する殺人鬼は、窓から飛び降りた。

第2話了

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