第一章 02話



2996年2月15日。午前1時。
デジタル時計は、太陽が昇っていない時刻をさしている。
普段は、静けさに満ちているが、今日はパトカーのサイレンが煩くて眠れない。
寝間から出て、襖を開けた。
白と黒のパトカーが時速80kmで飛ばしていく。
事件か。あの時と同じ胸騒ぎがする。
パトカーが向かう先は、あの方が住んでいる絹先町だ。
まさか、またあの方の身に何かあったのでは?
パトカーのサイレンが、虫の知らせのように頭に響く。電気をつけた。
大丈夫だ。弟は、隣の敷布団でぐっすり眠っている。
枕元にあった自分の携帯電話を取りアドレス帳を開いた。
あの方の名前は、『あ』行の一番最初。カーソルを動かさなくてもボタンを押すと着信画面へとうつる。合間嗄荳。0904869****

あの方に電話をするのは久しぶりだ。
緊張する。二年前までは、普通に連絡をとりあっていたのに。
一昨年の2月14日、あの日を境に連絡を自ら絶った。
あの方が新しい人生を歩むために。
プルプル‥
着信音は、いつこうに鳴り止まない。
プツ。
つながったと思いきや決まり文句の機会音が流れる。『ただいま不在して‥』ピッ。
留守番電話の決まり文句が終わるまでに電話を切る。
電話を切った直後。
携帯電話から電話がかかってきた。
まさか。あの方か?携帯電話を見ると、
あの方の名前が表示されている。
すぐさま、電話をとった。
「合間さん!?」
『黄川日夕暮か?京都府警の嶋津明智(しまずあけち)だ。』
「‥嶋津警部‥。お久しぶりです。
どうして、合間さんの携帯電話から貴方の声がするのか分かりませんが。
夜遅くにどうしたんですか?」
『元名探偵の弟子なら察しがつくだろ?』
「‥合間さんになにかあったんですか?」
『ああ。合間探偵‥いや、合間嗄荳が何者かに殺害された。』
「!?」
『合間だけじゃない‥絹先町一体が焼け野原だ。生存者を探したがいない。生存者零だ。』
「合間さん以外全員焼死体という意味ですか?」
『そうだ、信じられないがな。まるで絹先町だけ火事が発生したようだ。しかし、合間だけが』
「殺害された形跡があるとおっしゃるんですね」
『そういうことだ。死因は、刃物による刺殺。切り口から見てバタフライナイフだろうな。心臓ひとつきとは相当な手練れなようだ。』
「‥死亡推定時刻は?」
『合間の死亡推定時刻は、2月14日の19時から20時の間だ』
「本当に絹先町の住人全員が焼死体ですか?」
『ああ、全員だ』
「ふむ、不思議な事件ですね。 とにかく、現場に行ってみないと分かりません。今からそちらに向かいます。」
『おいおい、黄川日家のお坊ちゃんが夜遅く出歩いちゃいかんだろ。それに上から警察はこの件から手を引くように言われている』
「おや、家柄は関係ありませんよ。それに僕は警察じゃありませんよ。探偵です。しかし‥変ですね。パトカーのサイレンが騒々しい。その事件の他になにかありましたか?」
「ああ。なんでも、怪盗が出たらしい。」
「‥怪盗?」
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