「…君は…僕の侵した罪を鮮明に詳しく説明しろと言うのかい?」

「ああ。気になるじゃねぇか好きな男を殺す理由と、この町を破壊した犯人。言ったよな?合間が死ぬ前からこの町は全焼してると。
ということは全焼させたのはお前じゃねえっつことだろ。合間をはじめて愛し殺したのなら」

「残念ながら知らないよ」

「嘘つけ」

「嘘じゃない」

「嘘だな」

「君は部外者だろ」

「ああ、ただの目撃者だ」

「なら、話すことはないよ。サングラス早く返してよ。しつこい男は嫌われるよ」

濔音は、手を差し出す。

「んじゃあ分かった」

黒斗は、濔音の手中にサングラスを入れようとした。その時、黒斗は濔音の腕をグイッと引き寄せる。逃げようとする腰に片手で抱き締め、強引に濔音の唇に黒斗の唇を重ねた。

「!?…んっ…」

濔音は、面食う。黒斗の手によって身動きがとれない体。口内に舌が入る。濔音の舌を弄っていると舌と舌が触れ合い黒斗は舌を絡ませようとするが濔音は舌を絡めようとはしない。黒斗の舌から逃げようとするが甘い濃厚な舌遣いは濔音を解放することはしない。長くて大胆な接吻に、濔音は絶え切れなくなりガクガクと足が震える。零れてきた唾液も無視し、濔音の口内を侵す。

「!…っ…ふっ…はぁ…ん」

長い接吻に、濔音は絶え切れなくなり酸素を求める。
濔音は、むせてようやく唇は解放されたが、身体は開放されずにずっと抱き締められたままだ。

「ゴホゴホ…はぁはぁ…何するんだい…離せよ」

濔音は、朱に染まった顔で涙目で睨み必死に抵抗するが、所詮は大人の男の力だ。微動だにしない。「へー。愛してる恋してる言うわりには大人のキスしたことねーんだな。お前」

流れ落ちる銀の糸を舐めて、黒斗は濔音の耳元で囁いた。

「さてはお前、シたことねーだろ」

「…え」


黒斗に言われたことが図星だったのか濔音はカアッと熱があるみたいに赤くなった。初めてだ。殺人現場を目撃された時よりも、おでこにキスされた時よりも、サングラスをとられた時よりも、合間嗄荳が紫木月濔音の初めての殺害相手であることを知られた時よりも。明らかに動揺していることが分かる。こういう類の質問が弱いみたいだ。耳まで赤くしている。しかし、こんなに動揺していることが黒斗に知られても目を逸らさずに涙目で睨んでいる。

「…くっく。いいな。お前の顔もその目も。イきそうだわ。…決めた」

今度は、黒斗が濔音を瞳で射抜く番だった。
月光の下、全焼した跡地で怪盗は殺人鬼に言った。

「濔音。
今からお前を盗むわ」


第1話了
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