レンズの近くだ。小さく黒く書かれている。

「…」

「このグラサン。その男からの貰い物じゃねぇのか?」

「…」

「お前が、早くグラサンを取り戻したかった理由。
アイデンティティとか顔を隠したかったとか…そんな理由より好きな男のサングラスを他の男に渡したくなかったんじゃねぇのか?」

しばらく、沈黙が続く。
あれだけ、饒舌だった濔音が黙っている。言葉を探しているのか。目は動揺せず驚愕せず焦らず泣かずずっと黒斗をあの目で見ている。黒斗は、嘲笑した。まったく目の色が変っていないこの女に黒斗は益々興味を抱いた。

「…探偵と怪盗って本質的な部分は変わらないと思わない?」

「…はっ?」

怪訝そうに黒斗は濔音を見た。何を言っているんだこいつはと言いたげなように。

「怪盗も探偵も目敏いし、器用だし好奇心旺盛だしIQ高くなかったらできないし面倒臭い生き物だよね。怪盗だって探偵だって調査出来なければいい結果をもたらさないよね。違うところは、獲物。探偵は生物、怪盗は物かな」

「おいおいスルーかよ。」

「本当に素敵な生き物だよ。探偵も怪盗も。僕は、そういう頭のキレる人間は大好きだよ」
「だから、俺は探偵と怪盗の話をしてるんじゃ…」

「そうだよ」


「合間さんは、僕が初めて恋をして愛して命を奪った相手だよ」


月はいつの間にか、黄色に変わって高く昇って濔音の顔を照らしている。濔音の眼の色が黒斗にはっきりと分かった。黒斗は驚いた。虹彩が珍しい白銀色で瞳の近くに宝石のように美しく象られている。美しい目だ。黒斗はそう思わずにはいられなかった。魅了した。10才以上も年下の娘なのに。子どもには見えない優しい目で合間を見る姿は、最初にこの娘を見た時と同じだ。ー女神のようだ。

「合間さん探偵さんだったんだよ。とても、頭の賢くて優しい人だった。怪我をしたずぶ濡れの殺人鬼を助ける位にお人好し。その時、合間さんが殺人鬼にサングラスをあげたんだ。分かり易い説明でしょ?」

女神のように合間を見ながら優しい目で微笑する。
そんな目でその男を見るな。見るなら俺にしろ。
黒斗は、そんな言葉が出そうになった。
濔音の優しい声色が続く。

「君の知りたかったことはここまで。ここから先は質問に応じないよ」

「まだ話の伏線じゃねぇか」
濔音は黒斗を見つめた。
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