濔音は、バッと手を振りほどき、爪先を地面に置き足を安定させる。視線の先は、死んでいる合間。そして、彼女は思考する。
合間は、死後硬直が進んでいるだろう。心臓の機能が停止して何分たったのだろう?脳が目が鼻が口が手が足が。体の気管が停止する課程をこの目でこの肌でこの手で感じとった。死体は冷たくなり屍体になっていく。それでは、精神は何処へいく?魂は何処へいく?果たして合間の魂は、大切な人達のもとに逝けたのだろうか。
彼女の思考は中断した。
冷たい手が濔音の頬を優しく撫でるからだ。その手は、黒白黒斗のものだった。また彼女の思考は再開する。
何故、黒斗は頬や肌や人殺しの手を触ったのだろうか。何故、黒斗は殺人鬼と会話しているのだろうか?自白させて警察に突き出すつもりだろうか。弱味を握るつもりだろうか。何はともあれ家族に迷惑をかけることはあってはならない。相手に真相を知られる訳にはいかないのだ。濔音は、フッと笑い口を開く。


「君は、分かったような口を利くね。確かに、紫木月の属性は当たらずとも遠からずだ。人を愛せないと殺せないからね僕たち紫木月は。だけど、合間さんに恋をしていたわけではないよ。僕は合間さんが抱いていた家族愛に敬愛していただけ。それを色恋にあてはめるのはどうかと思うよ。それに見てみろよ。この町は、合間さんが死ぬ前から僕によって全焼されている。つまり、合間さんは初めての被害者ではないよ。さて…そろそろお遊戯はお終いだ。グラサン返しなよ。」

黒斗の瞳を捕らえる大きな瞳。彼女の眼の色は何色なのか黒斗には分からない。分からないが真っ直ぐ、射抜くような眼に黒斗は身震いする。人を殺したというのに、動揺しない眼。手は震えていたくせに、目は死んでいない。
この女の動揺する眼が見たい。この女の驚愕する眼が見たい。この女の涙で濡れる瞳が見たい。
黒白黒斗は紫木月濔音から奪ったサングラスを月に掲げた。

「AIZU AIMA。」

「!?」

サングラスの左付け根部分を見ながら黒斗は言った。


「…グラサンに小さく刻まれているな。」


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