だが、間もなくすると震える手がしっかりと俺の頬を撫でてきた。濔音の瞳から涙が流れている。涙目だが、強い眼差し。その目であの声で俺を捉える。

「…////ずりぃ」

その目は、あまりにも綺麗で。俺を心配して潤った瞳なんて信じられなくて虚をつかれた。

俺は、濔音を抱きしめていた手を離し座りこむ。
「黒斗くん?」

この女は。
甘美な媚薬のような声も
覗きこんでくる仕草も
花火が終え月光に照らされた
透き通る白い肌も
赤い薔薇の様な血も
涙で潤った瞳も
全て全て全てが。


愛おしい。


俺は、欲望のままに腕をひきよせてそのまま濔音の身体を地面に寝かせて深いキスをする。離した時に繋ぐ銀の糸が垂れ落ちる。銀の糸と垂れ落ちる血液を舐めとるように、首元から胸にかけて愛撫していく。濔音はびくっと身体を反応した。

「黒斗くん…お願いそれ以上は…」
「あ?やめねぇけど?」
「なっ…!っ…」

突起した乳頭に甘噛みをしながら濔音の秘部に触れ、中に指を入れる。秘部からは、薔薇のような血液が流れ落ち熱を帯びていた。広がっている…ふと地面を見ると血のついた玩具が転がっていた。それを見て小さく舌打ちする。その刹那、濔音はばっと後ろに下がり裸を手で隠し真っ赤な顔をして俺を睨みつける。

だよな。警戒するよな。
俺は、自分の欲望を押さえつけ、倒れている男の上着を奪い取り濔音に投げつける。

「前だけでも隠してろ。そのままだとお前をこの男のように犯しちまいそうだ。悪いけど、止められる自信無ぇわ」
「分かった」
濔音は、服を羽織った。このままこの女は、去ると思った。こいつはそんな女だから。今日は、それでいい。無理矢理抱いてこいつの傷を増やしたくない。…なに、またこの女を盗めばいい。何度だって盗んでやる。だけど、今は逃げろ。
だが、そんなことを思っているのも関わらず、濔音は俺の隣にちょこんと座ってきた。
「おま…」
「花火綺麗かったね」
「…」
「屋台も楽しかった。僕、祭り今日が初めてだったんだ。今日一日楽しかったよ。誘ってくれてありがとう、黒斗くん」
「…」
俺は、濔音の頭を自分の肩にのせて、銀の髪を撫でる。俺への気遣いなのかこいつの本心なのか分からない。だが、濔音は涙を止めて微笑んでいる。それは、あまりにも美しい微笑みだったから、じっと見ることはしなかった。代わりに返事をする。

「ん。また、来年も見に行くか」
「…うん」

濔音は小さくうなづいた。


*END*


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