トゥールシャ「濔音ちゃん!」
濔音は、壁によりかかり頭を下げていたがトゥールシャが来たので濔音は頭をあげた。
ーあっ、やばい…変なこと考えるな。
トゥールシャは、少し頬を朱に染めて上着を着せてから、ネクタイを外そうとする。
濔音「待って…今外したら僕は君を殺してしまうかもしれない。ううん、それだけじゃない。お祭りに来ている人も、みんなみんな…」
トゥールシャ「濔音ちゃん…」
濔音「はは。格好悪いところ…いや、見苦しいところ見せちゃってるね、ごめんね」
濔音はトゥールシャに笑いかける。凄く優しい笑顔で。しかし、笑顔とは裏腹で全身が震えている。ー本当は、とても怖かったんだ。
近くでみると酷い有様だ。美しい容姿が、傷だらけで無理矢理外されたバイブが地面に放置されている。バイブは血まみれで。
最低だな。気を失っている罪惡より僕が最低だ。何もせずのうのうとただ見ていた僕が一番最低だ。トゥールシャは、ひざまついて濔音を抱きしめようとしたがやめて頭を下げた。
トゥールシャ「ごめん、僕見てたんだ。何もできなくてごめんね、濔音ちゃん。…否、失礼しました。元神界死神総長シャドー様」
濔音は、目を見開きトゥールシャを見る。
濔音「驚いた。僕の前世を知っているなんて」
トゥールシャ「アッシュの敬愛しているゼロ殿からお聞き致しておりました。
シャドー様だけではなく、貴女は偉大な方々の魂の生まれ変わりなのに。命をかけて僕は貴女を護ることが出来なかった。申し訳ありません」
濔音「そうか、君はアッシュくんの親友でゼロの友達だったね。知らない訳ないか。でも、今も昔もそんな高貴ではないよ。今は、ただの紫木月濔音だ。頭を上げて。頭を下げるようなことはしていないし、むしろ僕は感謝しているよ。来てくれてありがとう」
濔音は微笑する。
トゥールシャ「濔音ちゃん。」
濔音「でも、もう大丈夫!ほら、震えも止まっているし家族が来てくれると思うから先に行っててくれないかい?アッシュくんなら川沿いにいると思うからさ」
トゥールシャ「…でも、ここは危険だよ。また、麻薬の男達が来るかもしれないし…」
濔音は、頷き立ち上がり
濔音「うん、そうだね。直ぐに行くよ」
トゥールシャは、心配しながらも立ち上がった。
ー多分、濔音ちゃんは僕を頼らないだろう。気を許してもくれないと思う。安心も出来ないと思う。彼女は僕の腕では泣けない。だからせめてー。
トゥールシャ「上着あげる。北大陸の軍服の上着なんて超レアだよー?それに、僕アッシュ以外人に物をあげないんだ、ラッキーだったね、みーちゃん。じゃーばいびー」
ーなんて言って濔音ちゃんを笑わせるしかなかった。案の上濔音は、ふふと笑って手を振った。
ーどうか、彼女が一秒でも早く傷が癒えますように。ー
僕は、そう心配しながらも川沿いへむかった。
1、川沿いへ
2、濔音サイドへ