頂*彩迦さんより(コラボ)
落ちた世界にて
何度も異世界を渡っていると、常識を(不本意に)覆される事ばかりで耐性がついたのか、簡単な事では動じなくなったと自負していた。
筈だけど、これは、やっぱり、色んな意味で、驚いた。
「ふぎゃっ!」
毎度の如く異世界を渡り任務を終えたため時狭間へ戻ろうと、空間に時空の穴を創りだした時だった。
何か、大きな力に引き寄せられたのだ。そして予定外の世界へと落ちてしまったようだ。
浮遊感を感じた筈なのに痛みはなく、受けたのは軽い衝撃のみだった。何故だろう、と恐らく不明な力の影響で少しくらくらする頭を抱えていると、視線を感じた。
それも凄く近くから。
「………」
「………」
「………えと、」
「………」
「…こ、こんにちは…?」
「…(人間?)」
藍色の長い髪にくすんだ金の瞳、整った顔立ちをした青年が此方を無表情に見つめていた。尖った耳や眼球の色が黒い事から彼が人間ではない事を物語っている。
引きつった笑みを浮かべながら取り敢えず(何故か)挨拶をした私はそこでハッと気付く
「うわああああっ!!」
私は彼の上、正確には膝上にのしかかるような体制になっていた。あぁそっか成る程、彼がクッションになってくれたお陰で衝撃が和らいだんだーあははー
──って笑えるかっ!
「いや、あの、すみません…!これには話すと長くて深い深ーい理由があったりなかったりしまして!」
「……別に、興味もない」
「それでですね…!──…え?」
何やら凄くテンパって理解不能な事を言った気もするが、気になるのは彼のセリフだ。
「き、聞かないの…?自分で言うのも何だけど、いきなり現れた不審人物だよ…?」
「?…何か問題があるのか?」
「えぇと、気にしないなら此方としては助かるけども」
ちょっと警戒心なさすぎではないか?
表情を見るかぎり本心で言ってるぽいから、もしかしたらこの人天然なのかもしれない。
悶々と思考は別の方へ飛んでいくが、彼の取り敢えず退いてくれないか、というセリフで今の状況を思い出す。私まだこの人の上に座ったままじゃん!
思い出した途端に恥ずかしくなり、勢いよく顔を下に向けながら後ろに下がろうとして、違和感
「…あの、お兄さん?」
「応龍だ」
「応龍、サン
腕を掴まれていると退くに退けないのですが」
掴まれている。それはもうガッシリと。あれ、可笑しいな、何でかな!?
真意の分からない私はあたふたとするばかりだが、彼はというとそんなのお構い無しにそれもそうだな、と答えた。
「離してくれると助かるなーなんて…」
「考えてもみれば、不審人物であるお前が索に危害を加えないとも言い切れない」
「あのー応龍サーン?」
「因って、お前をこの部屋から出すわけにはいかなくなった」
「おーい、ってえぇ!?」
話が違うじゃないかっ!
そう叫びたいが、彼から発っせられる“気”が段々と物騒なものに変わっていくのを感じて背中に冷たいものが流れる。
誰かタスケテー!
と、切実な願いが通じたのか、ぴりぴりとしたこの空気は一人の訪問者によって打ち破られた。
「応龍、失礼する…ぞ…?」
「…白澤」
「……この状況は、」
擬音で表すなら『ぴしり』だろうか。
白澤と呼ばれた彼は、文字通り固まった。…なにゆえ?
「嗚呼、索冥がありながらにしてお前という奴は…」
「は?」
「え?」
「見損なったぞ」
額に手を当て、何やら嘆く彼。
悲観するその姿まで麗しいのはやはり、彼も神獣であるからなのだろうか。
彼の言っている意味が分からず、応龍と共に頭を捻っていた私はようやっとその意味を理解する。
状況を整理しよう。
今の私は応龍の膝上にいて、しかも腕を掴まれている。つまり、見方によってはそういう状況にも見える訳だ。
先程までびくともしなかった応龍の腕を振りほどいて、私は部屋の隅まで飛び退いた。
「ちがっ、違うから!私その人と初対面だし!」
「…クス、可愛いお嬢さんだ。冗談だよ」
「かわ、冗談…!?」
「白澤、あまりからかってやるな」
流石に哀れだと思ったのか、応龍が白澤を諫める。私はといえば、恥ずかしさに穴があったら入りたい気分だ。
「女性の叫び声が聞こえたものだから、何事かと思ってな。して、君の名前は?」
「えと、…時…じゃない、飛鳥」
「“時”?」
「気にしないで」
「では飛鳥、どうやってこんな所(応龍の部屋)に?」
「それは…」
うっかり名字を言いそうになったが、誤魔化せたようだ(一般の人間ならともかく、神の眷属らに迂闊に名乗る事は出来ないのだ)
だが、白澤サンのごもっともな質問に言葉を詰まらせてしまう。参った。本当にどう話せばいいのか、いっそのこと時守だと言ってしまえば良いのだろうか。
「おや、何処へ行くんだ応龍」
「無論、索の所へ」
「彼女は?」
「好きにしろ」
当然のように答える彼の横顔はどこか優しげで、索という人がどれだけ大切なのかが伺える。
だからだろうか、ふいに言葉をかけてしまったのは。
「応龍―ずっと、傍にいてあげてね」
「―…あぁ。約束しよう、飛鳥」
自分でも、思わずといった感じだった。
彼は一瞬目を丸くするも、最初の時よりも幾分か柔らかく表情を緩め部屋を後にした。
隣で白澤サンが興味深げにほうと声を上げたのが聞こえた。
「(あの応龍が珍しい…)さて、飛鳥。聞きたい事は山程あるがお迎えが来たようだからまたの機会としようか」
「お迎え?あ、鳳蝶!」
次元を渡った時から姿が見えなかった私の次元蝶、鳳蝶が何処からともなく現れ心配そうに私の周りを飛び回っている。
苦笑して人差し指を立てればそこに優雅に止まる。ともすれば直ぐ様時空の歪みが生み出された。
「え、嘘。ちょっと待っ」
これはさっさと帰るぞと言うことか、鳳蝶サン怒ってます!?
せめて一言だけでも白澤サンに言おうと振り向けば、彼は別段驚いた様子もなく柔和に微笑んでいた。
「あのっ、──ありがと!」
「──此方こそ」
そうして時空の歪みは閉じられた。
落ちた世界にて
(不思議で素敵な出会いをしました)
(またいつか会おう、時守之巫女姫)
(どうした応龍、やけに楽しそうだな)
(─面白い奴と会ったんだ)
***
弐万打祝いとしていただいたイラストを元に妄想したもの←
口調とか呼び方とか間違ってたらすみません…!でも凄く楽しかった\(^O^)/ワハ
最後付近の発言は、白澤さんは時守の事も識っていそうという理由から。迂闊に教えることも出来ないという事情を知っているからこそ知らないフリをしたという…説明しないとよく分からない設定
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あのイラストからこんなに素敵なお話が…!!彩迦さん、あなたが神か←
表情筋が緩むのを抑えられませんでした、大学だったのに(ぁ)
彩迦さん宅では夢小説としてアップされていたのですが、私はバッチリ飛鳥嬢気分で読ませていただいたので、敢えてコラボ小説として転載させていただきます(^^)
彩迦さん有り難うございました―!!
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