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「もし私が怪盗だったら、クダリどうする?」

「え?なに?怪盗なの?」

「だから!もしものはなし!」

「ボク、もしのはなしキライ」



クダリはそう言って私が買ってきたモモンとモーモーミルクをふんだんに使ったケーキをぱくりと口にした。

そしてケーキの上に綺麗に乗せられていたモモンをバチュルに上げ、にこにこと笑う。



(おいおい彼女の私には嫌な顔でバチュルたんには笑顔ですか)




クダリはその見た目によらず、理論的な人間である。

反対にノボリさんは感情的であり、なんだこいつら性格反対じゃないかと思ったのは私だけじゃないはずだ。


まぁそんなわけでクダリはもしもの話が嫌いなのである。




クダリからの素っ気ない返しにフツフツと煮えたぎる怒りを、自分の分に買ってきたマゴの実のタルトにグサグサと突き刺せばタルト生地がボロボロと壊れていく。

ぐちゃぐちゃになっていくそのタルトが自分の怒りの感情と似ていて更に腹が立つ。




「うわぁ…タルトぐちゃぐちゃ。おいしくなくなっちゃうよ」

「私が食べるんだからどうでも良いでしょ!」



力任せにテーブルを叩けばガシャンとティーカップと中身の紅茶が跳ね、波紋が幾つも生まれるのが見えた。


私のその動作にバチュルは驚いたのか、いつも以上にその体を震わせた。

クダリはバチュルを大丈夫だとあやすように頭を優しく撫でる。



(おいおい彼女の私にもそんなことしないのにバチュルたんには優しいですね)




イライラで仕方がなく、ぐちゃぐちゃになったタルトを口に詰め込んだ。

バチュルにはなんの罪もないのは解っていてもダメなのである。






「ボク、もしとかキライ」

「はいはいそうでしたねー」

「それに怪盗とかムリでしょ」

「えぇそうですね私は運動音痴でございますよー」

「そもそも他の男のなにか盗むとかありえない」

「へいへいそうで…す、よ……は?」




ニタリと笑うクダリはスラリと目を細めて私を見る。

思わずフォークを持つ手に力が入る。





「ボクだけの盗めばいいの、わかる?」

「え、あ…うん」

「返事ははい、って習わなかった?」

「は、はい…」




さっきまで怒ってたのは私なのに、気付けばクダリが静かに怒っていた。


(あれ?なんか立場逆転してない?ってか何を盗むの?)





クダリはニタニタと怖いくらいの笑みを顔に貼り付けながら、私にモモンのケーキを口に押し入れてくる。




(いやいや、ちょっと待ってクリーム零れるからそんなに詰めないでくれよ)




ケーキを無理矢理入れてくることに怒りたいのは山々だが、クダリはご立腹のようで何も言えない。

でも何がクダリの癪に障ったのか全く解らない。




「ケーキ、おいしいね」

「はい……」

「バチュ…」




とりあえず今はこれ以上クダリの機嫌を損なわないように、詰められるモモンのケーキを咀嚼するだけしか私には術がなかった。





わかってる?
奪って良いのは、ボクの心だけ!






2013.12.22 収納




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