サブマス01 |
※サブマスの二人が酷い人で絡みもない 始まりは本当に些細な事だった。 でも自分にはとても大切なことであったし、それは周りの人から見てもそうだったから、今こうなっているんだと思う。 でも彼女達は勘違いをしている。 私とサブウェイマスターの彼等の間には特別な関係などないのである。 ただ、あの日、偶然助けられたのが私で、助けた相手がノボリさん達だっただけの話なのだ。 でも彼女達は私の言葉なんてちっとも信じてくれないから、飽きもせず毎日やってくるのである。 「あなた、クダリさんのなんなの?」 「ですから、先日もお話しましたが上司と部下の関係です」 「嘘だわ、そんなの可笑しい」 「何が可笑しいのか分かりかねますが、それ以上でも以下でもないのです」 「じゃあノボリさんとのあれはなんだったの?!」 「ですから、それも先日お話ししたとおり…」 毎日まいにち繰り返される質問に、テンプレとなりつつある回答をするのにも慣れてきてしまった。 憧れのバトルサブウェイの事務職として採用され、仕事を始め少しずつではあるが慣れたと思ったらこれである。 仕事上お客様の前に出ることなどないので、こうやって彼女達が現れるのは決まってお昼休みか仕事が終わった後である。 最初こそ彼女達に詰め寄られ、あることないこと言われ、泣いた日も少なくなかった。 しかしそれも毎日続けばさすがに慣れもしてしまう。 (こんなこと、慣れたくないんだけどね…) 別に手をあげられるわけでもない。 言葉で私の心を緩やかに傷付けて終わり。 時間にすれば十分ほどで、彼女達はすっきりした表情をしてバトルトレインへと姿を消してしまうのだ。 でも別に彼女達の言葉全てに慣れたわけではない。 私だって感情ある人間である。 彼女達の言葉一つで傷付きもするのだ。 いっそ、暴力を振るわれたら簡単だった。 でも言葉だけではどうしても被害届も出し難く、ずるずると彼女達の言葉を受けるしかなかったのだ。 「私が、なに、したっていうの…」 ぼそりと愚痴を言っても、人で溢れるバトルサブウェイでは誰もその言葉を拾うことなどない。 悔しくて少し涙腺が緩んだがそれさえ誰も気付きやしない。 ただただ現状をどうも出来ないのが歯がゆかった。 「アオイ、かぁわいー」 「はぁ…クダリ、貴方のその性格、どうにかならないのですか?」 「それ、ノボリには言われたくなーい」 アオイが歯を食い縛り、自分の職場へと帰るその姿を捉えていた者が二人いた。 クダリは普段上がっている口角を更に上げ、にたりと笑う。 それは普段見る彼とは違い、妖艶さを感じる。 ノボリはそんな弟の表情に溜め息をつくが、彼もまた判り辛くはあるが笑っていた。 二人は一卵性の双子であった。 顔も体もそっくりな彼等は表情こそ違えど、好みや性格は似ている。 「ぼく、アオイの泣きそうなかお、だいすき!」 「そうですか」 「なにそれ!クダリだってだいすきなくせにー!」 「ですから否定はしていないでしょう」 アオイはサブウェイマスターの二人が自分を助けたことを本当に偶然だと信じていた。 それは周りの人間も同じである。 だがそれはノボリとクダリによって用意された出来事であり、アオイがこうやって毎日のように彼らのファンに心を痛めているのも二人の計算内であった。 「やっぱりアオイがいちばん!」 「アオイ様は私達の期待を裏切りませんね」 「あー!つぎはどうしてあげよう!」 頬をほのかに朱色に染め、アオイを見つめる二人は恋をする青年そのものである。 しかし歪んだ愛情を含んでいることに気付く人など、誰も居やしないのだ。 ほら、もっと泣いて歪んだ顔をみせてよ 好きな子こそ苛めたくなるのを、幼稚だなんて言わせない。 だってその表情が一番愛しいのだ。 2012.7.27 |