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※クダリ視点 彼女は少しずつ体がむしばまれていた。 自分では気付かないでたくさんお仕事してたけど、ずいぶんと前から体は限界がきていたのだ。 それに気付かないふりをしていたからこんなことになっちゃった。 なんでそんなことになったのか、考えてみればノボリのせいだけど、自分のせいでもある。 こんなに自分を追いつめちゃうなんて思いもしなかったから、ぼくも罪悪感でいっぱい。 ノボリがアオイちゃんを避けるような行動を起こしたのはついこの間、ぼくとアオイちゃんがお昼ご飯を一緒にしたときから。 あの日をさかいにノボリは誰にも気付かれないよう、アオイちゃんを避けはじめたのである。 「こんなに頑張って…ごめんね」 どうせ寝るのなら彼女の家のベッドで睡眠を取ってほしかったけど、今回ばかりはしょうがない。 こっそりと混ぜた少しの薬で、強制的に寝てもらう。 ノボリがこのこと知ったらきっと怒るけど、でもこの原因が自分だって気付いちゃったらどうせなにも言えなくなっちゃうの、ぼく知ってる。 ノボリがアオイちゃんに少なからず好意を持ち始めているのは確実なのだ。 ただそれまでヒナちゃんのことを話して、好意を抱いていた手前、どうしたら良いのか分かんないんだと思う。 そうじゃなくてもノボリは恋愛へたっぴ。 恋愛初心者。 自分の心の変化に付いていけない。 それが可笑しなことになって、アオイちゃんを避ける行為に至ってしまったのだろう。 そしてその行為によってアオイちゃんが悲しんでいるのに、ノボリはちっとも気付かないのだ。 「仕事やポケモンのことなら鋭いのに…ノボリってほんとう…恋愛にはどんかーん」 お互いに好意を寄せ合っているのだろうに、全く幸せになれないだなんて可笑しいはなし。 ぼくには全然理解できない。 でも二人を見ているとそんな簡単にくっ付けるのならば、最初からどちらも辛い思いなんて、少しもしなかっただろう。 「明日はアオイちゃん、おやすみね」 ぼくはアオイちゃん直属の上司じゃないけれど、ノボリに頼んで休みにしてもらおう。 彼女がこんな状態だって気付いたら、きっとノボリは気になって仕事なんて手に付かなくなっちゃうから。 「ノボリのためにも、はやく元気になってね?」 すやすやと眠る彼女にどうか幸あれと、ぼくは祈ることしかできないけれど、きっと近い未来ノボリと笑うアオイちゃんが見れるに違いない。 むしろ見せてくれなきゃぼくノボリとぜっこうしちゃう。 簡易ベットに沈むアオイちゃんの頭をひと撫でし、ぱちりと部屋の電気を消したぼくはまた仕事に戻るべく、白いコートをひるがえした。 ベルよ鳴り響け きみに幸を さっさとくっ付いて、二人で笑ってよ。 2012.6.4 |