5.殺したいくらい愛してるせいで今にも手が滑りそうだ








自分が他人とは違う人の愛し方をするのだと知ったのは、初めて恋人というものが出来た時であった。


ずしゃりとこけた拍子に膝を擦り剥き、涙を浮かべた彼女に言いようのない興奮を覚え、それと同時に愛しさを感じたのが始まり。

当初は自分が異様であることなど知らず生きていたが、怪我の耐えない毎日に、いつしか彼女は自分から離れていたのである。



(そう、ぼくがつねに彼女の体に、傷をあたえていたのだから)




それから何度恋人が出来たとしても、歪んだ表情を相手に望めば、彼女達は自分の元から離れていくものだから、それからはめんどくさいし特定の恋人を作らなくなった。


(ちなみにこんな変な性癖はノボリも一緒だと知ったときは驚きながらも面白かった)

(やっぱりぼくらは双子だね)




そんな中、出会ったのが彼女、アオイだった。

何だかんだでアオイは正式な告白をしたわけでもなく、恋人なのか曖昧な自分から傷つけられたとしても、離れる事はしなかった。

最初はアオイはマゾかなにかかと思ったけど、そうではないようだし不思議であった。


でも自分が傷付けてもなお、離れていかないアオイに興味と、おもしろさを感じた。

それは新しいおもちゃを見付けたような感覚によく、似てる。



(ノボリっぽく言えば、久しぶりの獲物を手に入れたような…ってところかな)




そしていつしかそれは自分の中でしっかりとした歪んだ愛しさになり、アオイの嫌がるような表情が愛おしい。


そっと触れただけの口付けにも彼女は顔を赤らめ、そして自分の好む歪められた表情に変化する瞬間に酷く興奮した。


でもそんな嫌がる反応をしながらも、しっかりと自分への好意が含まれているのをぼくは知っている。

上手に自分の元へ来るように手引きしながらも、たまにはアオイの歪んだ愛らしい表情を見るのが自分の楽しみである。


あぁ、明日はどんなことをしてあげようかなぁ。




殺したいくらい愛してるせいで今にも手が滑りそうだ




ねぇ…キミの、歪んだ表情が愛おしいよ。







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