3.いま拷問事典読んでるから邪魔しないで |
執務室だろう場所までずるずると引き摺られてきたけど、二人とも各々仕事があるためか、すぐに私はその場に放置された。 自分はここから出たいのだが、生憎どうやって来たのかは覚えていないので動けやしない。 見渡してみても、二人専用の執務室なのか他には誰も居ないどころかデスクも二つしかない。 白黒の兄弟はデスクも綺麗に白黒であり、どちらがどちらのデスクなのかは見て解る。 正直、手持ち無沙汰であるが下手に動いてまた怒られるようなことはしたくない。 とりあえず大人しくソファに座ってみたがやる事がない。 やる事がない。 やる事がない。 1時間くらいしただろうか、その頃になってやっとクダリさんが帰ってきた。 クダリさんは特に私のことを気にするわけでもなく、するりと自分のデスクに座り仕事を始めた。 確かに彼は今勤務中なので、仕事をしているのは普通のことではある。 だがしかし、自分は何故この様な場所に置かれているのか知りたいし、どうにかして解放されたい。 そもそも1時間も放置されたのである。 私にもそれなりにやらねばならないこともあるし、正直怖いしで帰りたい。 (あぁ…帰ってお風呂に入ってさっさと寝たい) 最初こそ静かにクダリさんの仕事が終わるのを見ていたが、ふとこれは仕事が終わる夜中まで待たないといけないのではないかと気付いた。 そんな時間まで放置されるのなんて真っ平ごめんである。 「ク、クダリさん…」 「なぁに?」 「あの…私、そろそろ帰らなくてはいけないのですが…」 意を決してクダリさんに話しかけ、帰りたい旨を伝える。 そしたらクダリさんはそんなことかと言わんばかりの表情になり、一つ溜め息をついた。 だがすぐにいつもと同じにっこりと笑い、「いま拷問事典読んでるから邪魔しないで」っと、恐ろしいことを平気で私に言い放ったのである。 「じゃあさっさと自分を帰して下さい!!」っと叫びたかったが、怖くて何も言えなかったのは仕方がないと思います。 いま拷問事典読んでるから邪魔しないで ぺらりぺらりとクダリさんは楽しそうに読んでいるが、その本が拷問辞典だと解る人間は果たしているのだろうか。 |