2.鼻から牛乳出して謝ったら許してあげる |
ブタ野郎事件からクダリさんと気付いたら付き合うことになっていた。 いや、実際に付き合っているのかは私もよく解らない。 果たしてブタ野郎は恋人になるのか、自分には解らないがそう言ったニュアンスがあったような、ないような。 別にあれからこれといって何かが変わったわけではなく、付き合っているのか本当に不明なのだ。 もしかしたらあの時見た、ドSクダリさんも嘘じゃないかって思い始めた。 そんな曖昧な状態であるため、真実かどうかをはっきりさせるためにも今日、バトルサブウェイにやってきたのだ。 だが正直、直接クダリさんに話をするのは前回のドS発言により抵抗がある。 あれは自分の夢かもしれないなーって思いつつも、まぁ久しぶりにシングルトレインにでも行くかーっと考えながらホルダーに相棒のボールを付け、利用者が減ることのないサブウェイへ足を踏み入れた。 先日の失敗もあり気を付けて階段を下り中に入れば、今日も変わらずジャッジさんが色々な人のポケモンをジャッジしているのが見える。 さぁ久しぶりにシングルトレインに行こう、なんて暢気に考えながら歩けば急に背後に人の気配を感じ振り返った。 知らない間に私の背後に立っていたのはコートと帽子を取った、ノボリさんだかクダリさんが立っていた。 正直あの色違いのコートがないとどっちがどっちかわからない。 ついでに言うと表情で判別したいところだが、クダリさんはたまにノボリさんみたいに口角を下げるし、ノボリさんだってクダリさんみたいに口角を上げるときがある。 その時に限り、二人はちゃんと感情のある人間なんだなーって思ってるのは内緒である。 一人でうんうん呻っていれば、その後ろから同じようにコートと帽子を外したノボリさんだかクダリさんがやってきた。 本当に二人そっくりそのままに並ぶもんだからどっちがどっちやら状態である。 あぁそうだ二人はズボンの色が違ったなーっと思い出し、視線を下にスライドさせれば綺麗に白黒で分かれていた。 これでどっちがどっちか判別出来るじゃないかと、今度は表情を見てみればなんてややこしいことであろうか。 色の違いと口角を見比べてみれば、黒いズボンなのににっこりの口と白のズボンなのにむっつりの口で眩暈がした。 (なんだ、どっちがどっちなんだ状態ですよ) どっちがどっちだか全く解らず、とりあえず口角が本物の方が本人だと思い、黒いズボンのにっこり口に「クダリさんですか?」と聞けば、「ぼくこっち」っと白いズボンにむっつり口だった方が知らない間ににっこりしていた。 なんだこれはにっこりが二人いるぞって思ったら、黒いズボンのにっこりがむっつりになって「私はノボリでございますよ」って言われ、自分が間違えてしまったと気付いた。 「アオイちゃんならぼくらの違い、気付くと思ったけどまだまだだったね!」 「残念で御座います」 「あー…すみません」 なんて台詞だけ見れば和やかだったけど、そんなことなくって、一瞬でノボリさんとクダリさんは目付きを変えた。 (え、なんだこのサド目) クダリさんだけでなく、何故ノボリさんもそんな目付きになったんだと思ったが、この二人は双子だから性格も一緒でも可笑しくないかって悠長に考えたが、それどころではなかったようだ。 「これからは間違えないで下さいまし」 「もし間違えたら、おしおきね」 「おやおや…私の弟は少々嫉妬深いところが御座いますから、どうぞお気を付け下さい」 「とりあえず今回のことは、鼻から牛乳出して謝ったら許してあげる!」 なんてニタリと二人は笑いながら、私を関係者以外立ち入り禁止と書かれたエリアの中にずるずると引きずるのであった。 鼻から牛乳出して謝ったら許してあげる まだ治りかけの肘をクダリさんは容赦なく掴んでひっぱるものだから、痛みで涙を浮かべれば二人は一層笑みを深めるのだ。 あぁ、ドSが二人。 逃げられやしない。 |