サブクリ02






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目覚めは最悪と言って良いだろう。


朝っぱらから発狂してしまったせいで隣人から壁ドンされても文句は言えない。


あまりの驚きで何も言えなかったが。








「すみません…なんでここにいるんですか…?」

「えーっ?!だってぼくたち昨日、アオイちゃんにお仕事おわったら行くね!っていった!」

「なので今この様に私達はアオイ様のお宅にお邪魔しているのでございます。」

「いや、うん、はい…なんで鍵締めたのに部屋入れたのかを詳しく聞きたいのですが…」

「ぼくのバチュル!」

「いや全く意味が分かりません」

「アオイ様、ドア側の窓の鍵を締め忘れていましたよ。ですから私達アオイ様が空き巣に合わないように代わりに鍵をかけて差し上げようと、窓からクダリのバチュルを入らせてドアの鍵を開けたのです」

「説明ありがとうございます。お二人が空き巣じゃないですか」

「ぼくたちそんなバカなやつらじゃない!アオイちゃんのこと考えて空き巣から守ったの!」

「いや…だからって…」




目覚めれば両側にサブウェイマスター。



なんて最悪な目覚めだろうか。





一人用のベットに大の男二人も追加されたことによって悲鳴を上げているのが分かる。



やめてくれ、私の癒しのベッドが壊れたらどうしてくれる。

貴方達サブウェイマスターとは給料が違うのだ。

すぐに新しいベッドを買えるほど貰ってないんだぞ。




そんな私の心の叫びに気付かない振りをして、二人は私のベッドに自分も入れろとばかりにぎゅうぎゅう詰めてくる。

止めてくれ、サブウェイマスターにサンドされても私は嬉しくない。

むしろ恐怖だ。





左からクダリさん、右からノボリさん。

小さなベッドだから密着度は恐ろしいことに0である。




確かに私の部屋には暖房機器がない。

なんだかんだで仕事は忙しいし、休日も出掛けてることが多いため滞在時間が少ないのだ。

本当に寝るだけしか機能をなしていない私の小さな城には、必要最低限のものしかない。



だから二人が私のマンションに来て、温かさを求めるのにお風呂かベッドしかないと考え付くのは百歩譲って良いとしよう。

しかしそれから何故人様のベッドに入り込む選択をしたのか意味が分からない。







「すみません、ノボリさん…手が胸に当たってるんですけど」

「おや、これは失礼。余りにも貧相でしたから私、肩か何かかと思っておりました」

「あはは本当どっか行ってくださいよ」

「アオイちゃん家さむーい!なんでおこたないのー?」

「いやまずイッシュにこたつ売ってないんで」

「えー実家から持ってきてよー!」

「送料いくらかかると思ってるんですか!ってかクダリさんもお尻触んないで下さい!」

「えーだってさむーい!」

「寒いとお尻触るがイコールのなるとか私知らないんですが!」

「アオイ様煩いですよ。隣人にご迷惑です。それにもう幾度となくそういう関係を持っているのに何を恥ずかしがっておいでで?」
「それと!これとは!別です!!」





あぁそうだ。

私は以前ヘマをしたせいで二人と体の関係も持ってしまったのである。

もっと他の綺麗な女性とすれば良いのにと言ったら、『したけどその子たち、体以上のこと求めるんだもん。アオイちゃんじゃなきゃ安心してできないよー』らしい。

それを聞いたときは開いた口が塞がらなかった。

もうそいつらと付き合ってしまえと怒鳴ってやったらことに運ばれたのはつい最近のことである。





「もうありえない」

「なにが?」

「お二人のことがですよ」

「心外ですね」

「言っておきますけどこれパワハラですからね」

「アオイちゃんがなに言ってもみんな信用しないとおもうんだけど」

「お可哀想に…」

「どうせ私は下っ端鉄道員ですよ…っ!!」





以前同僚にこのことを話したら『なにを夢見てるの?』っと真顔で言われた。

あの時のショックは一生忘れられない。





正直二人の外面は非常に良いので、私との関係に気付いている人間は誰一人いない。

むしろ私が付きまとってる疑惑が出てるくらいである。


付きまとわれてんのは私だバカ野郎。







「で、結局お二人はなんの用で来たんですか…」

「あ!すっかり忘れてたーっ!」

「帰って下さい」

「そう怒ってばかりでは皺が増えますよ」

「増えたらこの関係終わらせてください」

「それはムリー!ぼくアオイちゃん好きだしー」




にっこりと笑いながら、クダリさんが爆弾発言をしやがった。

いやいや、その愛の言葉は実の兄であるノボリさんに言ってくださいよ。


クダリさんの可愛らしい愛の告白に、ノボリさんに掴まれていた右腕がギリギリと軋む。




「いだだだだだだっ!!ノボリさん痛いです!!!」

「おや、失礼。」




片やぎゅうぎゅうと私に抱きつく、片やギリギリと腕を握ってくる。

全く何がしたいんだこの二人は。










こんなアホなことをしていたら、頭上でマメパト時計が元気よく鳴き始めた。








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