06







※マツバ視点




僕の家に1人同居人が増えた。


彼女の事を世間一般では人とは言えないが、僕には普通に人間のように彼女が視えてしまうので良いだろう。




彼女、アオイちゃんと僕が出会った時、彼女は魂だけだった。



別にそれが珍しい事ではない。

エンジュではよく視れる光景である。

(まぁ、それはきっと僕だけなんだろうけど)



しかしアオイちゃんの可笑しいところは生前が視えないところである。



僕の千里眼は面白いもので、様々なものが視える。

過去や未来などと言ったものや、彼女のような成仏の出来なかった霊等も視れるのだ。


修行の成果もあり、今では自分が視ようと思うものを制限して視れる様になった。



彼女のような霊を視ると大体その人間の過去の姿、つまり生前の姿をみる事が出来る。





しかし彼女はどうやっても生前の姿が視れないのだ。




(彼女はまだ死んでいないのか、はたまたこの世のものでもない……例えばそう、神なのか)







アオイちゃんと出会った場所はスズの塔の最上階であった。


ホウオウが飛び立つその元で、彼女はふわりと不安定に浮いていたのだ。







そして話を色々と聞けばホウオウと会話を出来ると言うではないか。



僕は修行の一環として、知識も詰め込まれてきた。

今まで家にある代々伝わる古い書物など読んできたが、ホウオウと会話をする人間など存在しなかった筈だ。





(彼女は一体…何者なのだろうか…)






一瞬だが本当に神の類なのかと思った。

もしくは彼女はポケモンなのかもしれないとも考えた。



しかし彼女からは確かに人間の波を感じたし、何より僕のゲンガーが彼女を人と判断したのだ。

同じポケモン同士なのだ、ゲンガーが彼女を人と言うのならばそれは真実なのだろう。





そう言った経路の結果、彼女が何者であるのか僕には全く解らなかった。







(彼女はいづれ、僕にとって何かプラスになるのだろうか)



正直ホウオウと約束をしたと言う彼女の言葉を聞いた時、傍に置けば必ずホウオウにまた会えると思った。




伝説のポケモン、ホウオウ。


僕の生きる意味、存在である。







ホウオウが僕の目の前に降りてくるのであれば、少しでもその可能性を高められるのであれば、そうだ、僕は不安で押し潰れそうな彼女を利用する事も容易であった。








「アオイちゃん、何か不便な事はないかい?」

「マツバさん…私は大丈夫です」

「そうかい?何かあったら言ってね」

「いえ、そんな!ここに居させていただいてるだけで!」






僕がアオイちゃんを家に置いているのには裏があるのを彼女は気付いているのだろうか。


例え気付いたとしても彼女は僕の傍以外で、己の身を寄せる場所などないのだ。





(だって、そう、彼女が言っているのだから)








僕がホウオウにまた巡り合えるように、彼女を利用する。












どうか許して欲しい。
少しでもホウオウの手がかりを手元に置きたいのだ。




そしてどうかホウオウが僕を認めてくれますよう。









卑怯だと言われても
僕は彼女を手放せない





2011.12.11


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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