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「私は、ヒナ様の事を、諦める事ができないのです…」

「……」


シングルトレインは時刻通りに終着駅に着いた。

乗る時はそのまま飛び降りでもしてしまうのではないかと思ったが、ボスはややすっきりした表情で下車した。


(あぁ…良かった…)

(何が良かったのか、自分でも分からない、け、ど…)


「ハヤマ様」

「…はい」

「私、ヒナ様の事を諦められないなんて、いけない事なのでしょうか…ね」

「いえ、いいえ……そんなこと、ないですよ…」

「ハヤマ様…」



ボスは本当にヒナさんのことが好きなんでしょう。

それは私がボスを好きなことと同じなのだ。


諦めきれない辛さは自分がよく知っている。




「私、は、人を好きになることは、とても、素敵なことだと思うんです…」

「……」

「辛くても、ボス、がヒナさんを好きでいたいと、思うなら…私はそれを、応援します」

「ハヤマ様…」

「だけど……とても、辛い思いを、すると…思います……」

「……」

「だから…だから、どうか無理は…しないで、くださ…っ」

「ハヤマ様、泣かないでくださいまし…」




あぁ…ボスに迷惑がかかってしまった。

どうして自分はこんなにも脆くなってしまったのだろう。


(ボスへの想いは仕舞ったはずなのに)

(なんで涙が出るのだろう)



ボスが慌てて私に泣かないでと言うのが、何故か遠くに聞こえる。



(あぁ…泣いてしまってごめんなさい)




ぽたぽたと目から落ちる涙を拭うことも出来ず、私は焦っているボスを見て小さく笑ってしまったのは内緒である。








許されるのならば
どうか貴方の指が私の涙に触れて欲しい




2011.11.26


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