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※マツバ視点 小さな頃から人には視えないものがみえた。 他人と違うことがとても嫌だったが、それがホウオウに認められる為のものであると思えば辛くはなくなった。 エンジュシティは昔と今が同時に流れる歴史の街だ。 4つ目のジムでもあり、大体この辺りからトレーナーは自分達の進路を決め始めるのだ。 ポケモンショップなどポケモンに関わる仕事は各地方で必ずバッジ4つ以上を所持する必要があり、それ以上を所持するトレーナーはポケモンセンターや育て屋など高度な仕事に就ける。 そして僕は千里眼を持っている事もあり、挑戦者を内面から見極めると言う仕事もある。 以前ロケット団の事件もあり、ポケモン協会は警戒をしているらしい。 生半可な気持ち、ポケモンへの愛がないトレーナーにはここで振り落とすのである。 毎日の様にゴースト達が好む薄暗いジムで挑戦者を待ち、見極める。 それが僕の仕事なのだ。 変わらない毎日であった。 だが、今日は違った。 「っ!??」 「マツバはん!ホウオウが!!」 とても大きな力を感じ、脳裏にダイレクトにホウオウが描かれる。 僕の待ち望んでいたホウオウだ。 生きる意味で希望! 余りの強い力で一瞬立ち眩んだが、どうにかして持ち堪える。 ジムにイタコさんが崩れるように入ってきたのは同時だった。 「スズの塔…です、か」 「見えはりました?!」 「はい…すぐ、そちらに」 ゲンガーが心配げにこちらを見ているのに気付き、そっと頭を撫でてやる。 大丈夫。 僕はホウオウに、 (認められる) (認められるのだろうか) スズねの小道を走り、坊主さん達とも合流する。 一気に9階まで駆け上がってしまったが、イタコさん達には少し申し訳ないことをした。 でもこの時の僕にはホウオウしか頭になかったのだ。 許して欲しい。 「マツバはん、こっちどす!!」 「ホウオウ…っ!!」 目の前には虹色の羽を惜し気もなく広げるホウオウ。 一瞬でホウオウはスズの塔から飛び立ってしまうと分かった。 そう、ずっとホウオウを待ち望んでいた、僕の目の前で。 (あぁ、やっぱり、僕には…) イタコさんやお坊さんが飛び立ったホウオウを追うように駆け寄るのを僕は見ることしか出来なかった。 泣きそうになるのに堪えれば、一つそこに違和感を感じる。 (女の…子?) 僅かに地面から体が浮いているように見える、女の子がいるのだ。 (浮いて…いる?人ではないのか?) しかしそれはイタコさん達が彼女に気付かず、通り抜けたことで理解をした。 彼女は、人ではないということに。 「ねぇ…君は、ホウホウの何なんだい」 「…え?」 明らかに動揺しているまだ幼さの残る彼女に、柄にもなく苛立った声で話し掛けてしまったのに自分で驚いた。 でも許して欲しい。 だってホウオウは飛び立つ瞬間、確実に彼女に一鳴きしたのだから。 (それは愛おし気に、柔らかな、優しい、鳴き声だった) (何故ここにホウオウといた?彼女が?ホウオウに認められた人間?) (僕じゃなくて、彼女がホウオウに認められた?) (僕は、認められなかった…?) 一瞬にして脳内を荒々しく掻き回された気分になり、彼女に嫉妬した。 「もう一度聞くよ?君はホウオウの何なんだい」 ホウオウは僕の全てなのだ。 そうやって今まで生きてきたのだ。 だから許して欲しい、人ではない彼女に強く当たってしまったのを。 隣で僕の心をうつしたようにゲンガーが彼女を睨み上げるを肌で感じる。 彼女は酷く泣きそうになり、ふわりと体を更に浮かせた。 どうかお願いだから 僕の生きる術を奪わないで 2011.10.13 |