03






ボスの恋愛相談をするようになってから気付いたことがある。

ボスはバトルをするときはこれ以上にないほど積極的で、こっちが引いてしまうほど感情を露わにする。

しかし恋愛要素…ヒナさんが関わると一瞬にして消極的になるのだ。




つまりボスは恋愛に奥手な方らしい。



ボスと私は今日、たまたまお昼時間が同じになったのでボスの恋愛相談…基恋愛教室をサブウェイ内の休憩所で行った。

購買で買ってきたお弁当のからあげを頬張りながら、私は一つ気になっていたことを口にした。



「ボス、失礼ながらヒナさんとお話をされたことは…?」

「そっ!そんな恐れ多い!」



私の質問に驚いたのか、ボスは自分で作ったと思われるお弁当から煮物を床にべしゃりと落とした。

(あ…勿体無い)



「ハヤマ様、は、なんて!そんな!」

「ボス、ボス、落ち着いてください!急に立ち上がっては落とした煮物を踏んでしまいますよ!」



気が動転したのかボスは急に椅子を倒すほどの勢いで立ち上がり、頬をダルマッカのように赤く染めている。



「ノボリ、どうしたの?外まで声、聞こえた」



どうやってボスを座らせようか困っているときに、後ろのドアから聞き覚えのある声がした。



「ボ、ボス…」

「クダリ…」

「アオイちゃん、いつも言うけどボスじゃノボリといっしょ。ボクそれじゃわかんない」

「あ、申し訳ありません!」

「次はちゃんと名前で、ね。じゃないとボク、返事しないよ」

「はい!」



クダリさんはにっこりと笑って私のお弁当を覗き見て、からあげを摘んでいった。



「クダリ!貴方の分はちゃんとあるでしょう!」

「だってボクお腹ぺこぺこ!」

「右手にあるお弁当から食べなさい!」

「ボ、ボス、落ち着いて…」



ボスの向かい側、私の隣にクダリさんは座り持って来たお弁当を広げる。

勿論中身はボスと同じだった。



「お返しにアオイちゃんにこれ、あげるよ」

「あ…りがとうございます」



開けたばかりのお弁当からクダリさんは煮物を一つ箸で摘まみ、私の口元へと当てた。

つい反射的に口を開ければ入れられ、咀嚼する。


(思ったとおり、美味しい)



「全くクダリは…」

「えへへー、ごめんね」

「いえ、私は…むしろ煮物ごちそうさまです。美味しかったです」

「だってノボリ、良かったね」

「えぇ…ハヤマ様のお口に合い良かったです」



クダリさんが食事の場に加わったことで恋愛の話は終了である。

ボス曰く、ヒナさんの話は私にしかしたことがないらしい。

そもそも私がボスと恋愛の話を始めたのも偶然と、私の嘘から始まったことである。



(本当は私、ヒナさんと仲…言いわけじゃないし…ね)

ボスと話をたくさん出来るのは幸せではあるが、やっぱり自分ではない誰かを想っているのを目の当たりにするのはとても辛かった。

でも自らこの状況を作ったのだ。

そしてそれで自分は良いと思ったのだ。



自分の心が悲鳴を上げているのに気付いてたが、蓋をするしか私は方法を知らなかった。







泣きたい時は蓋をしてね





2011.10.9


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