KAHB | ナノ



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12月21日、
翌日廊下を歩く木ノ瀬くんを見つけ、そっと駆け寄り「わっ」と後ろから両腕を掴んだ。

吃驚したようだけれど私を確認すると呆れたように「なに」と言う。

「どこ行くの」

「職員室」

「私、理科室。途中まで一緒。」

遠目に見ているだけでは気づかなかった。並んで歩く彼のカーディガンの下の腕は意外にも太い。

「腕、筋肉あるんだね」

「あぁ、多分弓道を長くやってたから」

「弓道?意外」

「一番長く続いたスポーツだった」

彼が白と黒の道着を纏い、矢を放つ。多分それは美しいものなのだろう。容易に想像できる。

「やってるところ見たかったなぁ」

「もうやる気はないよ。」

そういえばと、彼が鞄を漁り何かを取り出した。
手の中にはプラスチックのヒイラギ、昨日のケーキに刺さっていたものだ。

「捨てていいのに」

「誕生日プレゼントだからね」

昨日、彼の誕生日を祝ったのはこの学校で私だけ。

その事が、馬鹿みたいに嬉しいこの感情はただの憧れや好奇心の延長線上のものだと中学生の未熟な私は思っていて、何をする訳でもなく
その冬大会で彼は大活躍、翌年の夏の大会では学校側が勝手に大弾幕を作る所まで男子バスケットボール部を連れて行き、倍率が高い事と特殊なカリキュラムで有名な星月学園に進学を決めて華々しく卒業した。

一方私は地元の普通科に進学、彼への恋心に気づいたのは高校生になってからの事だった。




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