KAHB | ナノ



hb@6


バスケットボールは屋内競技だからまだ良いものの、一歩外に出れば銀世界だ。聞こえは良いけれど歩きにくい雪が積もっている。

保健室まで運んでくれたお礼をすると言っても中学生に出来る事はたかがしれていて、コンビニで何か一つ彼の好きなものを買うことになった。

12月も後半の今、コンビニの中は完全にクリスマス仕様になっていて、店内BGMはジングルベルだしスイーツコーナーには厚紙のサンタクロースやプラスチックのひいらぎが刺さっているものも並んでいる。
木ノ瀬くんはそのスイーツにもあまり興味はないようで彼とコンビニをぐるりと一周し入り口に戻る。

「木ノ瀬くんは好きな食べ物とかないの」

「特に無いかな。」

「じゃぁ嫌いな食べ物は」

「無いよ。苦手を残すのが嫌いだから」

人間だれしも嫌いなものの一つや二つあっても罰は当たらないだろうに。
運動は何をやっても器用にこなすし、成績優秀。加えて嫌いな食べ物もない。非の打ち所がないとは彼の事を言うのかもしれない。

「そういうわけだから名前さんが決めていいよ。」

「それじゃぁお礼にならないじゃん」

「じゃぁ、目についたところでそれ」

すっと指したレジの横に並ぶ食欲をそそる白いまる。

「肉まん?良いね、私も食べたい。」

普通の肉まんとプレミアム肉まんがあるのだが、お礼なので奮発して後者を選ぶ。
この後、選んだ事を少しだけ後悔するのだけれど、それを気づかないまま肉まんを選んでしまった彼も人間だなと気づいたのは次の日の事だ。

二つの肉まんを購入し、一歩外に出れば頬を刺す寒さが待っていた。


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