KAHB | ナノ



hb@10


同級生は入学に買ったジャージの裾が足りなくなったという。

私の身長は平均、伸び盛りが終わったところで去年と比べて伸びたのは1cm
でバスケ部の中では低い方。女の子は小さい方がいいんじゃないなんて思っていたのは小学生までで、今では友人に誘われて入った部活が楽しくて、この身長が憎い。

せめて高く高く跳べたら、そう思うのだけれど上手く行かないし、シュートが特別うまい訳でも無かった。


緑の網、男女を隔てる国境際で休憩をしている彼を見つけ駆け寄った。
ペットボトルから水が喉を通る。成長途中の男を思わせる喉が上下移動をする。

「木ノ瀬くん、昨日はありがとね」

ちらりと彼が私を見た。
昨日の一件から図々しいかもしれないけれど、話しかけても良いかなと思うようになった。
彼に聞きたい事は以前から沢山ある。高く飛ぶ方法、試合でも混乱せずにシュートが入るコツ、そして何故部活を転々としているのか。

「私、重かったでしょう」

ペットボトルのキャップをきゅっと閉めながら「まぁ軽くはなかったかな。」と言った。

「人間なんだから、軽かったらそれは見栄か病気でしょ」

普通年頃の女の子にそんな事言うかと問うたのは自分なのに思っていたけれど、納得してしまった。木ノ瀬梓とはそういう人間なのだろう。

「部活終わったら時間ある?」

「あるけど、どうして。」

「お礼をしたいの」

というのは建前である。

「こういう場合、素直に受けておくのが正解?」

「大正解」

「じゃぁ、終わったら待ってる」

見えないところでよし、と拳を握った。
本当はここで緑のネットを掻き分けて、指切りげんまんでもしたら小指に触れられるのかもと思ったけれど、部長の「ミニゲーム始めるよ」の一言で妄想に終わった。



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